「中国に責任を取らせる」 デモの引き金引いた住宅火災、答え求めるウイグルの家族

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ウルムチの火災で亡くなったカマニサハン・アブドラマンさんと3人の子どもたち/Family Photo

ウルムチの火災で亡くなったカマニサハン・アブドラマンさんと3人の子どもたち/Family Photo

香港(CNN) もう5年以上、シャラパト・モハマド・アリさんと兄弟のモハマドさんは、中国の西端に住む家族と連絡を取れていない。中国政府はそこで最大200万人に上るウイグルのイスラム教徒やその他の少数民族を収容所に入れ、拘束しているとみられる。

父と兄も新疆ウイグル自治区で拘束されていると考えるシャラパトさんらは、悪い知らせが届くのをずっと覚悟している。しかし先月25日にようやく受け取った家族に関する情報は、これまでの想像を上回るひどいものだった。

友人らがソーシャルメディアで送ってきた画像には、シャラパトさんらの母親と13歳の妹の遺体が写っていた。2人は他の3人のきょうだいと共に、火災で亡くなっていた。火災は24日、新疆ウイグル自治区の首府ウルムチの集合住宅で発生した。

「家族のひどいニュースをソーシャルメディアで知った」。25歳のシャラパトさんは、CNNとのビデオ通話による取材で涙ながらにそう語った。シャラパトさんとモハマドさんは勉学のため、2017年前半にトルコへ移り住んでいる。

「母はとても素晴らしい女性だった。人を助けるのが大好きだった」と、モハマドさんが言い添えた。

トルコで暮らすシャラパトさんと兄弟のモハマドさん/Family Photo
トルコで暮らすシャラパトさんと兄弟のモハマドさん/Family Photo

悲劇の原因は新型コロナウイルス感染抑止のためのロックダウン(都市封鎖)にあるとされる。この措置のために救急隊の建物への進入にも、住人の脱出にも支障が出たとみられるからだ。火災を引き金にその週の週末は中国各地の都市で抗議デモが発生。人々は怒りの矛先を政府の強硬な「ゼロコロナ」政策に向けた。

400万人近い人口を抱えるウルムチでは8月から厳格なロックダウンが敷かれ、住民の大半は100日以上外出を禁じられている。

中国国営新華社通信は火災の死者を10人、負傷者を9人と主張しているが、地元住民が伝えるところによると実際の数はこれを大きく上回るとみられる。

火災の翌日、ウルムチの地方政府は市のコロナ政策が原因で死者が出たとの見方を否定。現在調査が行われていると付け加えた。

26日にはロックダウンを「段階的に」緩和する意向を表明。感染者がほぼいなくなったことを理由に挙げたが、実際には市内の感染者数は依然として1日当たり100人前後を記録している。

亡くなったシャラパトさんらの母親の甥(おい)で現在はスイスで暮らすアブドゥル・ハフィズさんは、中国当局が「人々を無力のまま、危険な状況に放置した」と糾弾。「中国にこの悲劇の責任を取らせたい」「我々は皆散々な目に遭っている」と訴えた。

悲劇の全貌を知る

ウルムチから4800キロ近く離れたイスタンブールで、亡くなった人たちの血縁者はなおも火災の全貌(ぜんぼう)の把握に努めている。

アリ・アッバスさんは17年に新疆ウイグル自治区を離れた。今回の集合住宅の火災は、自身が所有する15階にある1区画が火元になっていた。

アッバスさんがトルコからの電話でCNNに明らかにしたところによると、出火原因は孫娘がタブレット端末を充電しようとしたときに起きた電気故障だった。火はあっという間に燃え広がった。家の中は木製の家具であふれており、アッバスさんの娘や隣人らが水をかけても炎の勢いは収まらなかった。

その後、建物のある地域のスタッフが到着し、避難するよう指示。住人らを伴ってエレベーターで建物の外に出た。

しかしその直後に電源が落ち、エレベーターは動かなくなったという。

アッバスさんによると、ロックダウンの規制の下、過去1カ月間で陽性になった人のいる世帯は自分たちの部屋に閉じ込められていた。それ以外の世帯は部屋を出ることはできたものの、建物自体からは地域スタッフの助けを借りなくては出られなかったという。

国営メディアの環球時報によれば、ウルムチの地方当局者の1人は建物のドアが施錠されていたとの見方を否定。「住人は11月20日以降、時間をずらして外へ出ることが許されていた」と述べたという。同当局者はまた、建物からの安全な出方を熟知していなかった住人たちの方に責任があるとの認識を示した。

火が上方に燃え広がると、取り残された上階の住人たちは必死で助けを求める声をメッセージアプリに投稿した。ある女性は、音声メッセージで家族が酸欠状態に陥っていると告げた。地域スタッフはこれに答え、救急隊が到着するまで濡れタオルで口を覆うように伝えた。

しかし、救助が間に合わなかった人たちもいた。

アッバスさんは泣き崩れながら、「私の隣人たちに起きたことは紛れもない大惨事だ」「全てのウイグル人、愛する家族を失った全ての人々に、心から哀悼の意を表したい。心から許しを請う」と語った。

「ゼロコロナ」に殺された?

しかし遺族にとって、この悲劇の責任は電気故障のみに帰するものではない。

むしろパンデミック(世界的大流行)に対する政策が、建物からの効率的な避難を妨げたと、遺族らは口をそろえる。

前出のアブドゥル・ハフィズさんは、「(家族は)中国政府の『ゼロコロナ政策』の犠牲になった」「家のドアは外から鍵を掛けられていた。少なくともドアから出られていたら、あるいは建物の屋上へ逃げることができていたら、彼らは助かっていただろう」と話した。

遺族らは、救助も実際より早く来られたはずだと指摘する。消防署も病院も、現場の建物から数百メートルしか離れていないからだ。

新華社の報道によれば火災発生は24日の午後7時49分前後。消し止められたのはほぼ3時間後の午後10時35分前後だった。

火災の発生したウルムチの集合住宅に消防士が放水する様子/AP
火災の発生したウルムチの集合住宅に消防士が放水する様子/AP

動画には建物に向かって放水する消防車が映っているが、後方に下がりすぎていて水が炎に届いていない。ロックダウンに伴う路上での規制が理由とみられる。

ウルムチの地元当局者は消防車が建物に十分近づけなかったことは認めたものの、その理由は「建物に続く道路が他の車両でふさがっていたから」と説明した。

19階に住んでいたシャラパトさんの母親ときょうだいは、有毒な煙を吸い込んで亡くなったという。

シャラパトさんたちはまた、犠牲者の民族性も各々の死に際して一定の役割を果たしたと考えている。中国は他の地域でも同様のロックダウン戦術を用いているが、彼らはウルムチのロックダウンが異常に厳しいと感じている。さらに火災が発生したのがウイグルの暮らす地域でなかったなら、救急作業はより迅速に行われただろうと考えている。

CNNは詳細な要望を中国当局に送り、コロナ対策と少数民族への政策が原因となって今回の事態が起きたのかどうか尋ねたが、現時点で返答はない。

「今戻れば、投獄される」

米国をはじめとする国々は、中国政府による新疆ウイグル自治区での活動や収容所について、ジェノサイド(集団殺害)に該当するとの見方を示す。中国はジェノサイドのほか新彊でのあらゆる人権侵害を否定。収容所は職業訓練施設であり、宗教的な過激主義と戦うためのものだと主張する。

しかしCNNは過去5年間にわたってウイグルをはじめとする少数派の人々数十人や、内部告発者に転じた中国の元警官に取材した。彼らの報告によれば、新疆の収容所では拷問、性的暴行、洗脳が行われているという。

冒頭のシャラパトさんとモハマドさんのきょうだいは、ウルムチでの火災の際、父親と兄弟が家にいなかった理由について、2人とも現在収容所にいるからだと考えている。

シャラパトさんの父親と兄弟/Family Photo
シャラパトさんの父親と兄弟/Family Photo

CNNは中国政府に対し、2人の所在の詳細を尋ねた。

シャラパトさんもモハマドさんも、帰国すれば同じように捕まるだろうと懸念する。2人の出国時にまだ生まれていなかった6人きょうだいの末っ子のネーディエちゃんは5歳になっていたが、今回の火災で命を落とした。

「家族の葬儀に出たいが、もし今帰国すれば、中国は私たちを投獄する。拷問にもかけるだろう」と、モハマドさんは話す。

遅すぎる連帯?

ウルムチでの火災の後、中国本土の人口の大多数を占める漢族は各地で犠牲者のための追悼集会を開いた。しかし、長年にわたり残虐行為や弾圧を経験してきたウイグルの人々にとっては、こうした連帯の表明もほとんど意味を持たず、かつ遅すぎるものと映った。

ウルムチでの火災の犠牲者を追悼する人々=上海、11月26日撮影/AP
ウルムチでの火災の犠牲者を追悼する人々=上海、11月26日撮影/AP

「中国人は、我々のために抗議しているわけではないと思う」「自分たちの利益のためにやっている」と、ハフィズさんは指摘する。

「16年以降、数百万人が収容所で拘束された」「その時に彼らは立ち上がらなかった。助けもしなかった。強制収容の事実を認めてさえいなかった」

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