銃による死者、コロナ禍で激増 人種で大きな偏り 米調査
(CNN) 米国で新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の間に銃による死者が急増し、2021年の死者は過去最多になったという調査結果が29日、米医学誌JAMAネットワーク・オープンに発表された。
研究チームは米疾病対策センター(CDC)の統計をもとに、過去30年の銃器による死者について調査した。1990年以来の死者は計100万人超。ここ数年、特にパンデミックの間は、ほとんどの層で死亡率が増加している。ただし、性別や人種別にみると大きな偏りがあった。
論文共著者でハーバード大学医学校研究者のエリック・フリーグラー氏は、銃による死者数について「今我々は、これまでとは比べものにならないほどの激増を目の当たりにしている」と指摘。「2019年から21年にかけてのパンデミックの間は、2年間だけで死者が25%以上増えた。これまで起きたことのない事態だった」と解説する。
調査によると、1990年以来の銃器による死者は、ほぼ86%を男性が占めていた。銃による殺人は黒人男性が最も多く、銃による自殺率は高齢の白人男性が最多だった。
銃による殺人の割合は男女とも、2014~21年にかけてほぼ2倍に増加。男性の死亡率は女性の5倍を超えていた。21年の銃による自殺率も、男性が女性の7倍に上った。ただ、女性の自殺率も年を追うごとに増えている。
人種による偏りは一層鮮明になった。20~24歳の黒人男性は10万人中142人が銃による殺人で死亡。21年の銃による死亡率の全米平均のほぼ10倍だった。
黒人とヒスパニック系男性の銃による殺人の割合は、20~24歳の年齢層で最も高かった。一方、白人男性の場合、この割合は30~34が最も高くなっている。この層で比較すると、若いヒスパニック系男性の殺人の割合は白人男性のほぼ4倍、黒人の若者の場合は22倍にも上る。
地域別にみると、銃による死者は西部から南部へとシフトする一方で、銃による殺人の割合は依然として南部に集中しながら増加傾向にあった。銃による自殺率は地域によってそれほどの差はなかった。
ボストン大学公衆衛生校のジョナサン・ジェイ准教授は、銃による死者増加の背景について、以前から存在していた格差がパンデミックによって一層拡大したと解説する。
さらに、パンデミックの影響で不安を感じさせる出来事が増え、護身のために銃を持たなければという気持ちが強くなったと同氏は指摘した。
米ジョンズ・ホプキンス大学による別の調査では、2019~21年にかけて増えた自殺や殺人は、ほとんどあるいは全てが銃に起因していることが分かった。銃による自殺率は10%増えたのに対し、銃以外の自殺率は8%減少した。銃による殺人の割合は45%増えた一方、銃以外の殺人の割合は6%増にとどまった。
「社会的孤立や、社会サービスや支援の削減といったストレス要員は、暴力を引き起こす危険因子になる。その全てが全般的な増加につながったと考える。ただ、最も弱い立場の人たちに、不均等に負担がのしかかった」と同大学のアリ・デイビス氏は話している。