少子化の原因とも批判される大学入試から「キラー問題」排除へ 韓国
その結果、韓国ではハグォンが一大産業として繁盛している。教育省によると、2022年の私教育の総額は26兆ウォン(約2兆8700億円)に上ったという。
これはハイチやアイスランドの国内総生産(GDP)とほぼ同じ額だ(ハイチは約3兆円、アイスランドは約3兆6000億円)。
李氏によると、昨年の小中高生1人あたりの私教育費は月額41万ウォン(約4万5000円)で、07年に教育省が統計を取って以来の過去最高額を記録した。
格差の悪循環
教育省によると、韓国ではハグォンが当たり前になっているため、私教育を受けている小中高生の割合は、昨年78.3%に上ったという。塾に通う金銭的余裕のないごく一部の家庭や生徒には、これが大きなプレッシャーになっている。
韓国では大学入試の競争率が他よりも激しい。なにしろ全体の70%近い生徒が高等教育に進学するのだ。経済協力開発機構(OECD)によれば米国が51%、英国が57%なので、他の先進国と比べてもかなり高い。
そのため韓国ではどの所得層の保護者も多くが、周りから取り残されたくないがために、家計を子どもの教育費につぎ込んでいる。
だが専門家は、こうした制度が教育格差の深化と定着化を招いていると主張する。低所得世帯にかかる負担があまりにも大きいため、裕福な家庭よりも余計に収入の大部分を子どもの教育費に割く傾向にある。それでも格差は解消されず、各種研究結果を見ても、低所得世帯と高所得世帯では子どもの成績にはっきり差が出ている。
李氏は批判の矛先をハグォンに向け、保護者や生徒の不安を金もうけに利用する「私教育カルテル」だと非難した。
「保護者も教師も教育関係者も、政府が積極的に乗り出して私教育を(公立)学校教育に吸収するよう望んでいる」と李氏は言い、公正な制度の確立とハグォン文化の「廃絶」を約束した。
政府は対策として、住民がハグォンや予備校の不正を住民が報告できる臨時のコールセンターを設置したと李氏は述べた。
また公立教育の枠内で課外授業や個別指導プログラムを増やし、生徒が塾通いに「追い込まれる」ことのないよう、育児サービスも改善すると付け加えた。
優等生の代償
このような教育の過当競争は、生徒と保護者の両方に重荷を負わせることにもなる。
生徒にかかる重荷がひとつの要因となって、韓国の精神疾患問題を助長しているという批判は以前から上がっていた。韓国の自殺率はOECD諸国の中でもっとも高い。
韓国の保健福祉省は昨年、長引く新型コロナウイルス感染症の影響もあり、10代や20代の若者の自殺率が増加していると警告した。