少子化の原因とも批判される大学入試から「キラー問題」排除へ 韓国
22年に政府が行った調査を見ると、状況はさらに厳しい。調査対象となった全国6万人弱の中高生のうち、男子生徒ではおよそ4人に1人、女子生徒では3人に1人がうつになったことがあると回答した。
過去の調査でも、13~18歳の若者の約半数が教育を一番の悩み事に挙げている。
教育は保護者の肩にも重くのしかかっている。韓国で子どもを持つことをためらう風潮が広がっている背景には、長時間労働や賃金据え置き、住宅費の高騰といった負担の他、圧倒的な教育費が主な要因だと専門家は考えている。
子どもの出生から18歳までの費用に関して韓国は常に世界トップだが、主な原因は教育費だ。子どもを生むにしても、1人しか育てられないと感じている夫婦は多い。
韓国の出生率は昨年世界のワースト記録を更新し、0.78にまで低下した。人口安定化に必要な2.1の半分にも届かない。高齢化が進む日本(1.3)と比べてもはるかに低い。
18年のOECD報告書にも、「子育て費用が高く、低所得世帯の家計の大部分を占めている。副収入がないと、子どもを持てば生活水準が下がる結果になり、低所得世帯は貧困の危機に直面する」とあり、さらに「家庭を持つことをあきらめる、または先延ばしすることが貧困を回避するための一つの対策だ」と続く。
政府もこの問題にかねて取り組んでいる。08年には、育児と教育への「過度な支出が世帯の大きな負担」になっているとし、負担軽減の新たな政策を打ち出さない限り、「我が国の出生率低下の問題をさらに悪化させる」危険があると警告した。
正しい方向への一歩になるか
これまでのところ、問題解決への努力はほとんど効果が上がっていない。政府は出産奨励として16年間でのべ2000億ドル以上を投じてきたが、数字にはほとんど現れていない。
活動家は、根深く残る性規範の解消や、働く親を対象にした子育て支援の拡充など、もっと抜本的な変化が必要だと言う。
CSATに焦点を当てたことは、そうした方向への一歩になるかもしれないという期待もある。民間組織「私教育の心配の要らない世の中」をはじめとする団体は、子どもたちが「過度な競争に飲み込まれる」のを防ぐ上で必要な措置だとして、政府の決定を歓迎している。
だが全員が納得しているわけではない。インターネット上には、複雑な問題に表面的に対処しているだけで、来年の総選挙に向けた政府の支持率稼ぎだという批判も見受けられる。
11月の大学入試に向けて準備を進める高校3年生の多くは不満顔だ。試験に出ると思っていた問題をずっと何年も勉強してきたのに、いきなり変更になって不意打ちをくらわされたと感じている。民間教育業界の改革の必要性に同調する意見もあるが、今回の対策の効果には懐疑的だ。
「現役の高校3年生として言わせてもらえば、キラー問題が排除されたからといって個別指導はなくならないと思う」とは、あるユーザーのインスタグラムの投稿だ。
ツイッターにはこんな投稿もあった。「私教育の過熱を冷ます方法は、キラー問題の除外やCSATの難易度を下げることではない。学歴に関係なく安全な職場で働けて、十分な給料を受け取れ、人権が保障されるような労働市場環境の改善だと思う」