ウクライナ国防相人事、クリミア・タタール人を起用へ 反攻の重大局面で
(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領はこのほど、次期国防相に少数民族クリミア・タタール人のルステム・ウメロウ氏を起用する方針を明らかにした。ウクライナの反転攻勢が重大局面を迎える中でレズニコウ国防相と交代する。
ウクライナ議会が指名を承認した場合、ウメロウ氏は山積する未解決の問題に取り組むことになる。
ウクライナと協力国や支援国の関係は新たな段階に入りつつある。ウクライナ政府はF16戦闘機の訓練、配備の加速を試みているほか、反攻を進展させるため、他の装備品や兵器についても欧米諸国からの調達を模索している。
また、国防省は西側防衛企業と協力して、国産兵器の生産拠点の整備にも取り組んでいる。この中には、ロシア国内の目標に使用される可能性がある新型長距離兵器の開発も含まれる。
国防相は「ウクライナ防衛コンタクトグループ」を通じて西側協力国とやり取りする際の主要窓口でもある。レズニコウ氏は、同グループを通じて米欧の高官と関係を構築してきた。
ただ、ウメロウ氏も交渉人として幅広い経験を持つ。戦争捕虜の交換に深く関与したほか、黒海穀物協定の仲介に手腕を発揮し、ロシアの合意履行に懐疑的な見方を繰り返し表明してきた。現在はウクライナへの投資誘致を担う「国有財産基金」の総裁を務める。
ウメロウ氏は政権与党「国民のしもべ」の党員ではないものの、ゼレンスキー氏は今回、ウメロウ氏を国防トップの役職に抜てきした。ウメロウ氏は野党のリベラル小政党に所属する。
クリミア・タタール人のウメロウ氏は1982年、中央アジアのウズベキスタンで生まれた。ウズベキスタンはスターリンによって大勢のタタール人が強制移住させられた国だ。クリミアに移り住んだのは子どもの頃、ソ連末期のことだった。
昨年には米経済誌フォーブスとのインタビューで、自身の出自が捕虜問題の取り組みに影響を与えたと説明。「私はクリミアの父祖の地への再定住を生き延びた。統合がどのようなものか、一時占領がどのようなものかを身をもって知っている」などと語っていた。
クリミア・タタール人は少なくとも1783年から、主にロシア人の手で迫害や大量追放に遭ってきた。ロシアのエカテリーナ2世はオスマン帝国からクリミアを奪取した後、83年に併合に踏み切った。
ウメロウ氏はイスラム教徒で、昨年には「ウクライナのイスラム教徒はウクライナの独立と主権のために闘う」と発言している。同氏の出自は中東湾岸諸国との関係構築にも役立ち、昨年大きく報道された捕虜交換ではサウジアラビアの支援を取り付けた。サウジに到着した捕虜たちを出迎えたウクライナの当局者は、ウメロウ氏だった。