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知られざるウクライナ軍ドローン部隊の裏側、ロシア領を標的に CNN EXCLUSIVE

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ロシア領へドローン攻撃、ウクライナの精鋭部隊に密着

ウクライナ(CNN) けたたましいプロペラの轟音(ごうおん)が、完璧な静寂を断ち切る。車のヘッドライトが点灯し、闇を切り裂く。ライトは前方の滑走路の一部分のみならず、ウクライナ軍の最高機密に属する兵器をも照らし出す。それを操るのは、同軍きっての秘密工作部隊だ。

灰色の機体の先端には、フクロウの黄色いエンブレムが貼り付けてある。翼を広げ、剣をつかむその姿は、紛れもなくウクライナ国防省情報総局(GUR)のシンボルだ。

同じフクロウのワッペンの入った戦闘服を着るパイロット2人が車内で最終チェックを行い、親指を立てる。「さあ行こう!」

車を高速で走らせ、50秒間追跡した後、全長約3.9メートル、翼幅約7メートルのドローン(無人機)「AN196リューティー」は一瞬で姿を消した。漆黒に染まったウクライナの夜の中へと。

ドローンが目指すのは、ロシア領の奥深くに位置する標的だ。

CNNは前例のない独占的なアクセス権を与えられ、GURに所属するウクライナ軍の長距離ドローン部隊の一つを取材した。隊員らは自分たちを長距離UAV(無人航空機)部隊と呼んでいる。

発言を記録することを許された隊員は2人だけだった。記事で使用できるのは彼らのコールサインのみ。GURで長距離ドローンの操縦を指揮するセルジと、部隊指揮官のベクターの2人だ。セルジは2022年2月のロシアによるウクライナへの全面侵攻以降、これまで500回以上に及ぶロシアへの長距離ドローン攻撃を直接監督したと話す。

CNNは2日かけてドローン部隊と共にウクライナ各地を移動した。部隊は9月29日の前夜、ロシアに向けた任務のため100機超のドローンを発射する準備をしていた。作戦に関わる安全上の理由から、CNNが取材で訪れた地点を明らかにすることはない。

彼らの狙いは兵器のための施設だ。具体的には施設内部に置かれた複数の列車で、ウクライナ軍によればそれらには最近届いたイラン製ミサイルが積まれている。

複数の情報筋が9月にCNNの取材に答え、イラン政府が最近になって短距離弾道ミサイルのロシアへの運搬を完了したと明らかにしていた。イラン側はいかなるミサイルの供与も強く否定している。

当該の施設はロシア南西部ボルゴグラード州の小さな村の外れに位置する。

ロシア南西部ボルゴグラード州の村に位置する兵器保管施設の衛星画像=8月4日撮影/Maxar Technologies
ロシア南西部ボルゴグラード州の村に位置する兵器保管施設の衛星画像=8月4日撮影/Maxar Technologies

長距離ドローンによる攻撃は、ロシア・ウクライナ戦争において一段と支配的な部分を占めるに至っている。地上戦が消耗の度合いを増す中、空戦は加速。大きな展開はドローン戦で起きている。

9月、同部隊のドローンはモスクワとサンクトペテルブルクの間にあるトベリ州の兵器施設を襲った。同州トロペツへの攻撃の結果、戦術弾道ミサイル「イスカンデル」や滑空爆弾、火砲の砲弾を保管する施設を破壊したとウクライナ軍は主張する。爆撃は大規模な爆発を引き起こし、その様子は数キロ先からも確認された。

ロシア西部トベリ州トロペツにある兵器保管施設で発生した複数の爆発を捉えた衛星画像/Maxar Technologies
ロシア西部トベリ州トロペツにある兵器保管施設で発生した複数の爆発を捉えた衛星画像/Maxar Technologies

ウクライナ軍によると、7月には黒海沿岸の石油精製所への攻撃で大規模な火災が発生した。

しかしロシア軍の防空システムはウクライナ軍のドローン攻撃の多くを阻止する。部隊がCNNに明かしたところによれば、米国が西側供与の兵器でロシア領を攻撃するのを許可した場合、GURの成功率は50%から95%に変動する可能性があるという。

ただロシアのプーチン大統領は、核保有国の支援を受けたあらゆる攻撃を合同での攻撃と見なすと警告。ドローンの大量発射に言及し、そうした攻撃の一例になり得るとの見方を示した。

ベクターは、ロシアの飛行場の多くが射程の外にあると説明する。これらの飛行場はウクライナへの空爆の多数で起点となる。ベクターのドローンは非常に効果的ではあるが、常に効率の良さを発揮できるとは限らない。確実に標的を仕留めるためには、スウォーム(群れ)が必要になる。「当然ながら我々はUAVを送り込むことが可能であり、実際に多くの場所を破壊してきた。だが十分ではない」と、ベクターは指摘する。

「我々が尋ねているのは、ロシアのあらゆる地点にミサイルを撃ち込む許可に関することだけではない。この戦争を我が領土から取り除くのに寄与し得る武器について話している」(ベクター)

任務の裏側

セルジとベクターの主導により、部隊はプーチン氏にロシア国内で打撃を与えようと試みている。

何を標的とするかに関係なく、彼らの任務は一連の厳格な作戦手順に従う。

地下にある白壁の事務所で行われる部隊のミーティングは、要領を得た内容だ。

「ドローンは12機前後になるだろう」と、セルジがベクターに告げる。ベクターの前に置かれた地図には、標的とロシア軍の防空・電子戦システムの射程の詳細が記されている。その後彼らは標的に接近する時刻を午前3時前後とすることで合意。各ドローンの発射の間隔についても確認した。

ベクターは素早くメモを取り、勢いよく立ち上がって言った。「不明点無し。任務完遂の準備を」

秘密の拠点でロシア領への攻撃ルートを策定する/Markina/CNN
秘密の拠点でロシア領への攻撃ルートを策定する/Markina/CNN

外へ出たベクターは車両に乗り込み、CNNの取材班についてくるよう合図する。電話の電源を切る。

夕暮れを迎える中、車列は連結トラックが並ぶ施設に停車する。机と二段ベッドを備えた小さな一部屋が、周囲数キロで唯一の光源だ。

黒い衣服と目出し帽を身に着けた男たちが命令の下るのを待っている。ベクターは部下にルートのプランニングを開始するよう命じ、小さなUSBキーを手渡す。キーにはこれからの任務に関する情報が含まれている。

部下が施設内の各所に散っていく。ベクターの説明によれば、こうした任務においてはプランニングの段階が極めて重要で、恐らく成功するかどうかの6割はここで決まる。

ベクターは特に過去12カ月間におけるロシアの防空の質に言及。自分たちが優位に立っていると指摘するが、決して簡単な任務ではない。

ルートプランニングを行う様子。安全上の理由からPC画面には加工を施してある/Markina/CNN
ルートプランニングを行う様子。安全上の理由からPC画面には加工を施してある/Markina/CNN

各ドローンには、1000以上に及ぶ経路上の地点情報がプログラムされる。ロシアの広範な防空システムをかいくぐるのが目的だ。ベクターはこうした作業にビデオゲームと似た部分があることを言外に認める。

「見た感じは遊びだ」と冗談めかして話しつつ、「それでもこれはゲームではない。戦争だ」と言い添えた。

セルジは部隊の全員が自分のような職業軍人ではないと付け加えた。セルジのウクライナ軍でのキャリアは20年を超える。ドローンを飛ばす任務に就いたのは14年からで、ロシアの支援する東部ドネツク州とルハンスク州の分離独立派がウクライナ政府軍に対して蜂起したのがきっかけだった。

囮の機械

倉庫には、主にウクライナ国内で製造した「リューティー」ドローン1機が、まだ翼の無い状態で置かれている。周りを囲むのは緑の迷彩塗装を施された木箱で、この中には自爆型ドローン「ルバカ」が何機も入っている。

ベクターはこれらの小型ドローンが任務の成功にとって極めて重要だと説明する。狙いはシンプルで、相手の防空を圧倒し、ロシアの砲撃をリューティーから引き離すことにある。リューティーには、しばしば最大で250キロの爆発弾頭が搭載される。

木箱の一つを開け、ベクターが囮(おとり)の機械を1機取り出す。金属の箔(はく)を翼に貼っているのは、ロシア軍のレーダーを欺くためだ。

車両の中で発射前のドローンの最終チェックを行う/Markina/CNN
車両の中で発射前のドローンの最終チェックを行う/Markina/CNN

全ドローン中3割程度が囮の任務に就く予定だと、セルジは説明する。ドローンはリューティーを先頭に約720~880キロ飛行するようにプログラムされている。目指すのは兵器の拠点と化したボルゴグラード州の村だ。

隊員らは弾頭をドローン本体に注意深く搭載する。搭載箇所は電気ドリルでしっかりと密封される。

今や全身を戦闘服に包んだセルジとベクターは、準備の最終段階を見守っている。今回の発射は、セルジがこれまで実施した中で最大規模だという。

「恐らく(ロシア人は)ウクライナで何が起きているかを理解していないが、これらのUAVが飛来すればはっきりと理解する。我々が過去10年間、どんなことに耐えてきたかを」(ベクター)

ドローンのフライトを追跡

全くの闇の中で、ドローンは所定の位置へと押し出される。操縦士を乗せた車両が後に従う。プロペラが勢いよく回り出すと、スムーズな離陸を請け負う操縦士は滑走路を高速で追跡。一度浮上すると、完全自律型のドローンは経路上にある無数の地点情報の確認を開始する。

ドローンを猛追していたベクターはブレーキを踏みしめ、「完璧」と宣言する。車をUターンさせ、愛国的な歌をラジオから大音量で流す。

これより前、ベクターはCNNへの取材に対しこう語っていた。「息子や他の子どもたちに将来戦争を経験させたくない。だから自分の生きている間に終わらせたい」

プランニングの拠点に戻ると、時間が刻々と過ぎていく。ベクター、セルジ、その他の隊員たちは追跡装置を通じたドローンの監視を続ける。

任務の成功を監視するには三つの方法がある。地上の人間、SNSテレグラムのロシア側のグループメッセージ、それから衛星技術を駆使した分析だ。三つの方法全てで検証を終えて初めて、任務の成否の判断が可能になる。

目標への到達時間に設定した午前3時が近づく。セルジがロシア全域のテレグラムチャンネルで目にしたメッセージを読み上げ始める。この攻撃が広範囲に及ぶものだったことが明らかになっていく。ロシア南部の様々な都市、ボロネジ、エイスク、ロストフ、ボルゴグラードの全都市が、それぞれの空域へのドローンの飛来を報じ始める。

ボロネジからの動画には、囮のドローンの1機が頭上を飛び去って行く様子が映っている。明らかに不安そうな女性の声が流れたのを聞いて、ベクターが笑う。

ベクターによると、こうしたテレグラムチャンネルを通じて「一定の成功を収めたのを理解する」という。

前出の村にある兵器保管施設を捉えた最初の衛星画像には、焼け焦げた野原が写っている。草が燃えた結果ではあるものの、施設内部で大規模な爆発が起きた形跡はほとんどない。わずかに標的を外したように見える。

ただGURはCNNと施設周辺を捉えたある動画を共有した。CNNはこれを独自に検証。加工処理されていない映像で中身を確認し、本物であることを突き止めた。

国防諜報(ちょうほう)担当の情報筋1人はCNNの取材に答え、把握しているカメラの位置と村からの距離を組み合わせれば、施設内部での爆発は大きかったと考えて差し支えないと述べた。

動画を早送りしたところ、発生した爆発の数は11。全て午前2時22分から3時18分までの56分間に起きていた。ウクライナを飛び立ったドローンが着弾を想定していたまさにその時間帯となっている。

CNNは複数の情報筋を通じ、施設への直撃が1件あったのを独自に確認した。情報筋の匿名性を守るため当該の画像は公開しないが、撮影されたのは攻撃から72時間以内だ。

画像からは数多くの物体が建物周辺に散らばっているのが確認できる。建物もひどく損壊している。

後に米宇宙企業マクサー・テクノロジーズが撮影した衛星画像もCNNは入手。ここに写る周囲の破片は前述の画像よりも数が少ないことから、ロシア軍が現場を片付けたことが示唆される。それでも建物は同じように損壊の度合いが大きい。

イランから運搬されたミサイルを破壊する任務は完全に成功したと、ウクライナ軍は主張している。

ドローンが目的地の村へ向かう間、セルジはCNNの取材にこう語っていた。「我々は絶えず敵に思い知らせている。自分たちが22年の2月に何をしたのかを。彼らは、我々が日々強さを増していることを実感しているはずだ。我々は勝利を手繰り寄せつつあり、彼らには敗北が近づいていることも」

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