小泉環境相が育休取得、物議醸す 期間はたった2週間
香港(CNN Business) 小泉進次郎環境相は17日までに、第1子誕生に当たり育児休暇を取得する意向を明らかにした。日本では父親が育児休暇を取るのはまれ。
現役閣僚で育児休暇を取得するのは小泉氏が初めてとなる。同氏は15日、生まれた子どもを一人で世話することが妻の負担になることを考慮し、出産後3カ月の間に2週間分の育児休暇を取ると決めたと語った。
日本は父親に対し世界でも最長級の育児休暇期間を認めているが、小泉氏が取るのはわずか2週間。だが、今回の決断はこの国で極めて重要な意味を持つ。
日本の法令では、出産後に両親とも1年間の育児休暇を取得する権利を有する。休暇期間中、雇用主からは賃金の支払いは保証されないが、公的な給付金を受け取ることができる。だが、昨年政府が公表したデータによると、2018年に育児休暇を取得した男性の割合はわずか6.16%だった。
小泉氏は小泉純一郎元首相の息子で、将来の首相候補とも目されている。同氏の育休取得はその点からも注目されている。
小泉氏は将来の首相候補と目されている/The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun/The Asahi Shimbun via Getty Imag
小泉氏は環境省での会議で、「どのような形で取得をするのか正直とても悩んだ」と述べ、環境相としての公務に支障がないように配慮したと発言。制度だけではなく空気を変えていかなければならないとの認識も示し、政治家の育休取得がニュースにもならないような世の中になることを望むと語った。
男性が育児休暇を取得しない理由
小泉氏は昨年、育児休暇を取る意向を示していたが、世間からは反発があったと経済協力開発機構(OECD)東京センターの村上由美子所長は語る。
日本法は父親の長期の育児休暇を定めているが、日本の職場文化の中では多くの人が取得していない。村上氏によると、日本はまだ完全にワーク・ライフ・バランスの考え方を受け入れておらず、男性が家で育児を手伝うことが想定されていないという。もし手伝えば、職場への忠誠心が疑問視される結果にもなる。女性の政治家が育児休暇を取得するのも難しいとも同氏は指摘する。
男性は育休を取るとキャリアに影響が出るかもしれないと恐れることが多い。
昨年、ある日本人男性がスポーツ用品大手のアシックスに対し、2015年と18年に育休を取得後、復帰すると以前の販売促進の職場から意図的に異動させられたとして訴えを起こした。同社はこの訴えを否定している。
カナダ人の男性は昨年CNNに対し、雇用主の三菱UFJモルガン・スタンレー証券に育児休暇を請求しても認めてもらえず、それでも取得すると5カ月後の復帰後に嫌がらせを受けるようになったと語った。同社はこの訴えを否定している。
男性に求められる役割は女性にも影響を及ぼす。世界経済フォーラムの最新の世界男女格差リポートによると、日本の女性は家事などの無償労働に費やす時間が男性の4倍に達する。その時間やリソースは女性が職場や政治の世界で費やされていたはずの時間から振り向けられている。
小泉氏の決断は出生率低下という社会背景の中で興味深い事象だと村上氏は語る。3週間前、厚生労働省は昨年の日本での出生数が統計を取り始めた1899年以来最低になると発表した。政府は様々な対策を講じているが、出生率は下がっている。
小泉氏は15日に自身のブログで、厚生労働省の調査結果を参照しながら、日本の少子化解決のためには、男性が育児休業を取れる社会にすることが重要だと指摘した。
村上氏は、低下し続ける出生率を見て、国民は今のどの施策も実効的ではないと考え始めていると言及。そして、子どもを産むことに積極的になれない要因は考え方や文化、職場環境にあると考え始めているとの見方を示す。
前例となる
今のところ、世間からの反応は賛否両論だ。小泉氏の決断を称賛する人もいれば、閣僚としての責任の自覚がないと批判したりただのパフォーマンスだと言ったりする人もいる。
ある人は小泉氏の休暇期間は短く、これではただのパフォーマンスだとの批判の声があるが、そのようなパフォーマンスが社会を変える最初の一歩になるとの考えを示した。
国際的に見れば、2週間しか育児休暇をとれない父親はかわいそうな状況だと村上氏は指摘する。これは、日本社会がいかにまだ保守的かを示すもので、特に政治の世界ではそうだという。
だが村上氏は小泉氏の決断が「休暇を取ってもいいのだ」というメッセージを広く国民に伝える結果になり、前例となることを期待すると語る。
村上氏は、今回の発表は非常に象徴的で重要であり、公的な場で誰かが育児休暇を取るということは勇気と希望を与えると言及。裏を返せば、日本の労働量の多さや世界と比べて遅れている度合いを示すものだとも語った。