フライドチキンが「日本のクリスマスの伝統」になった理由
(CNN) 日本のクリスマスの定番として、すっかり定着しているチキン料理。米国にはないこの習慣は、KFC(ケンタッキー・フライド・チキン)が1970年代から大々的に展開してきた宣伝キャンペーンに由来するとされる。
日本では1980年代半ば以来、クリスマスの期間中は全国でサンタの格好をした実物大のカーネル・サンダース人形がKFCの店舗前に飾られるようになった。店舗前には12月23日から、「パーティバーレル」を求めて行列ができ始める。
チキン料理が日本のクリスマスの定番になった歴史は、第2次世界大戦後の高度経済成長期にさかのぼる。
「日本の経済力が急激に伸び、国民は初めて消費文化に没頭する金銭的余裕ができた」。日本の食事や文化に詳しい米ハーバード大学のテッド・ベスター教授はそう解説する。「当時は米国が文化大国だったので、西洋のファッションや食べ物、海外旅行が絶大な関心を集めた」
1970年代初めに東京に住んでいたベスター氏は、「バスキン・ロビンス」や「ミスタードーナツ」といった外国のチェーン店が次々に現れる現象を目の当たりにしたという。
1981年のドキュメンタリー番組によると、そうした中で、KFCの1号店が1970年、名古屋に開店。その後も毎年約30店舗の割合でオープンし、1981年までにチェーン店の数は324店に増えた。
CMのひとコマ/KFC Japan/Youtube
日本のクリスマスは当時も今も、宗教とは無関係の行事だった。クリスチャンが人口に占める割合は1%足らず。1970年代当時はまだ、家族でクリスマスを祝う習慣はあまり普及していなかった。
そこに目を付けたのがKFCだった。同社は1974年、「クリスマスにはケンタッキー」の宣伝キャンペーンに乗り出し、間もなくパーティバーレルのセットメニューを売り出した。
一部報道によると、KFC日本法人創業期の経営者だった大河原毅氏は、売り上げを伸ばす目的で、チキンは米国の伝統的なクリスマス料理だと偽って宣伝したとされる。
これに対してKFC日本法人では、大河原氏がサンタの格好をしてクリスマスパーティーに出かけたところ、子どもたちが喜ぶのを見て商機を見出したと説明している。
一方、在日米軍が制作した2017年のテレビ番組では、KFCに詳しい人物がインタビューに応じ、外国人客がクリスマスの日にサンタのコスチュームを着てフライドチキンを届けてほしいとKFCに依頼したことがきっかけで、このコンセプトが生まれたと証言している。