深刻化する10代のスマホ依存、脱却へ政府が合宿プログラムも 韓国
ソウル(CNN) 時刻は午前4時。16歳のユ・チェリンさんは、スマートフォンを操作し続けて13時間が過ぎたことに気づいた。あと3時間足らずで、登校の準備をしなくてはならない。
「頭ではスマホを使うのをやめなきゃと思っていても続けてしまう。やめることができずに、そのまま夜が明けた」(ユさん)
韓国の高校に通うユさんは自分の問題を認識し、政府が運営するスマホ依存脱却のための合宿に登録した。そこではスマホを手放せなくなった10代の若者を対象に、依存状態を改善するための取り組みを実施している。
韓国は世界で最もスマホの普及率が高い国の一つだ。政府の統計によると昨年は10代の子どもたちのうち98%以上がスマホを使用していた。一方で科学技術情報通信部(MSIT)は、昨年の時点で10~19歳の3割前後について、携帯電話への「過度の依存」が認められたとしている。これはスマホの使用によって自己管理ができなくなるなどの「深刻な結果」が生じていることを意味する。
韓国・天安市内でのスマホ依存対策合宿に参加したユ・チェリンさん/Sophie Jeong/CNN
合宿の費用は、食事代の10万ウォン(約9300円)を除けば無料。合宿所は男女別で、1カ所につき25人程度を受け入れる。
冒頭のユさんの場合、中学時代にクラスの平均程度だった成績は高校に入ると最下位に落ち込んだ。スマホでSNSやカメラアプリなどに興じて睡眠時間が減り、起きている間も現実感に乏しく、夢を見ているような状態に陥ったという。父親から1日の使用時間を2時間に制限するよう言われたが、守ることはできなかった。
ユさんは7月に、自らの考えで合宿に参加することを決めた。施設の入り口でスマホを預け、数年ぶりにスマホなしで過ごす12日間のプログラムが始まった。
合宿では、10代の参加者らのためにパーティーゲームや芸術・工作などの活動、スポーツ大会などが用意されている。参加者らはこのほか、さまざまな形式でのカウンセリングを受け、自分たちのスマホの使用について議論することを求められる。就寝の30分前には瞑想の時間もある。
合宿中の子どもたちを励ます両親からのメッセージ/Sophie Jeong/CNN
合宿の責任者は10代の参加者たちについて、最初の2~3日こそ苦しげな表情を浮かべているもののその後は変化が生まれ、「楽しく友達と付き合うようになる」と語る。施設の壁の一画には、参加者の親たちが子どもたちに送った激励のメッセージが貼られている。
合宿を終えて1カ月、ユさんの1日のスマホ使用時間は以前の約6~7時間から2~3時間にまで減少した。現在は「やめたくなったらすぐにやめることができる」という。
それでも、すべての参加者に合宿の効果があるのかどうかは確信が持てないとユさんは語る。ルームメートだった2人のうち1人は、合宿が終了するやいなやユさんとまともにあいさつを交わすこともなく、真っ先にスマホをいじり始めた。自分の意思で参加するなら改善が見られるが、親に言われて仕方なく参加している友達などにはあまり効果がなかったというのがユさんの考えだ。
合宿で爪を装飾する創作活動に取り組む子どもたち/Sophie Jeong/CNN
スマホ依存の治療に携わる精神科医のイ・ジェウォン博士は、合宿の長期的な恩恵について、参加する10代の若者がどれだけ自分の習慣を改善したいと望んでいるかにかかっていると指摘。合宿の後でもスマホを使用したい欲求を抑えられない参加者には、医療の支援が必要なケースもあると述べた。
10代がスマホに依存する傾向があるのは韓国に限らない。17年に公表された報告によると、15年には経済協力開発機構(OECD)加盟国の15歳のうち16%が、学校時間以外で1日6時間以上ネットを使用していた。週末になると、この割合は26%に上昇したという。