体外受精で別の夫婦の子どもを出産、診療所が受精卵取り違え 豪
ブリスベン(CNN) 体外受精を行うオーストラリアの大手診療所が、女性に誤った胚(はい=受精卵)を移植したとして謝罪した。女性は結果的に別の夫婦の赤ちゃんを出産した。「人為的ミス」で胚の取り違えが起きたとしている。
オーストラリア全土で100カ所以上の診療所を運営するモナシュIVFは声明で、職員らが取り違えに「打ちのめされている」と述べた。この種の医療ミスはオーストラリア国内で初めてとみられる。
モナシュIVFの最高経営責任者(CEO)は今回の事態を謝罪。極めて苦しい状況にある当該の親たちを支援し続けるとした。
モナシュIVFは当事者の夫婦らの氏名を明らかにしていない。赤ちゃんがいつ生まれ、誰が面倒を見ているのかといった質問にも、プライバシーの尊重を理由に回答しなかった。
胚の取り違えが起きたのは、モナシュIVFが運営するブリスベンの診療所。同市のあるクイーンズランド州の法律では、産みの母親とそのパートナーを当該の子どもにとっての法律上の親とみなしている。
診療所が間違いに気付く前にどちらかの夫婦が取り違えを疑ったかどうかは不明。
メルボルン大学の臨床准教授で、婦人科病院の生殖医療コンサルタントを務めるアレックス・ポリャコフ氏は、オーストラリアで体外受精が行われるようになってからの40年間で初の事例だとの認識を示した。
胚の取り違えが発覚したのは今年の2月。ミスが起きた経緯は不明だが、前出のCEOは「単独の事例」だと強調。全診療所で安全対策を強化し、独立調査も委託したと説明した。
代理出産やドナー妊娠、共同養育を専門に扱う豪弁護士、サラ・ジェフォード氏は今回の事例について、「国内法では産みの親を子どもの法律上の親と定めているが、遺伝上の親が自分たちの胚の使用に同意していなければ、これに異議を唱える余地が出てくる」との見解を示した。
その上で、子どもの将来に関して今後どのような判断が下されるにせよ、それは子ども本人の最高の利益に基づかなくてはならないと述べた。それでもこうした事案の影響は「全ての当事者にとって生涯続くものになるだろう」とも言い添えた。
オーストラリア及びニュージーランドの生殖医療協会は声明を出し、「深刻な事案が発生したことを認識している」とした。その上で、このような事案は珍しいとしつつ「最高水準の透明性が求められる」と強調した。
同様の医療ミスは米国でも複数件起きている。最近ではある白人女性が黒人の赤ちゃんを出産したことで誤った胚を移植されたのに気付く事例があった。