増税で設備投資減少か、必要なのは「成長のブースター」 英
ロンドン(CNN Business) 英国経済は今、より多くの投資を必要としているものの、ビジネス界はすぐに投資が増える可能性は低いと見ている。
英国産業連盟(CBI)は最新の予測の中で、設備投資の「一時的な回復」は、2023年に法人税の引き上げにより終了するとの見通しを示した。
英国は過去数十年にわたり、設備投資額で他の先進国に後れを取っている。高賃金・高生産力経済の構築に強い意欲を見せるボリス・ジョンソン首相にとって、CBIの予測は大きな打撃となりそうだ。
事業投資は一時的に増加し、22年末までにパンデミック前の水準を上回るが、その後は企業が法人税の引き上げや、一部の工場・機械設備投資に対する減税措置の終了の打撃を受けるため、事業投資は減少するとCBIは見ている。
英国の法人税率は23年4月に19%から25%に引き上げられる。また21年に導入された工場・機械設備投資に対する減税措置も23年4月に期限切れとなる。
投資が低迷したきっかけは16年に行われた欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票だ。英国とEUの将来の貿易関係への不透明感から企業が投資を控えたのだ。そして新型コロナウイルスのパンデミックが始まって以来、投資はさらに減少している。
CBIによると、英国企業の設備投資は19年の第3四半期から20年の間に11.6%減少したという。
英国政府も認めているように、英国の事業投資は他の先進国の基準に照らし合わせるとすでに低水準だった。
21年4月に発表された英国財務省のファクトシートには次のように書かれている。「英国と他の先進国との生産性格差の大半は、英国の事業投資が他の先進国のそれに比べて歴史的低水準であることに起因する。事業投資の弱さが、08年以降の生産性の伸びの鈍化に大きく影響した」
生産性を高め、価格を押し上げることなく成長を促し、所得を引き上げる秘訣(ひけつ)は、テクノロジー、熟練労働者、イノベーション(技術革新)への投資だ。また英国では、インフレ率も上昇し続けている。21年10月には4.2%と10年ぶりの高水準を記録し、イングランド銀行(中央銀行)のチーフ・エコノミストは22年初めには5%を超える可能性もあると警告している。
CBIのトニー・ダンカー事務局長は「さまざまな規模の企業と話して分かったことは、企業は投資について野心的な考えを持ち、成長計画の実行に前向きであるということだ。しかし、企業はその考えも徐々に弱まり、我々は23年に崖っぷちに立たされる」と言う。
ダンカー氏は、減税は成功したが、今、産業界に必要なのは、英国が必要とする投資、特に環境保全技術への投資の規模を拡大するための的を絞った対策だとし、(英国経済の)回復を保護・拡大するためには成長のためのブースターが必要だと指摘した。
英予算責任局(OBR)は、英国経済の21年の成長率は6.5%に達すると見ている。しかし、イングランド銀行は英国経済がパンデミック前の水準まで回復するのは22年の第1四半期以降と予測している。
ブレグジット(EU離脱)はすでに英国経済の回復の足かせとなっているが、OBRはパンデミックよりもブレグジットの方が英国経済に対して、より大きな長期的ダメージを与えると見ている。