アジア最大のポテトチップスメーカー「カルビー」がジャガイモ不足から学んだこと

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東京のスーパーの棚に並んだカルビーのポテトチップス/Noriko Hayashi/Bloomberg/Getty Images

東京のスーパーの棚に並んだカルビーのポテトチップス/Noriko Hayashi/Bloomberg/Getty Images

香港(CNN) アジア最大のポテトチップスメーカーがジャガイモ不足に陥った場合、どう対処するのか――。日本の菓子大手カルビー(本社・東京都千代田区)は、苦い経験から学ばなければならなかった。

同社は昨年、異常気象とサプライチェーン(供給網)の混乱により3回の値上げを実施。最も重要な原材料であるジャガイモの調達方法を見直すことを余儀なくされた。

これに関し、カルビーの社長兼最高経営責任者(CEO)を務める江原信氏はCNNのインタビューで、我々にとって頭の痛い問題だと述べている。

同社は約1400億円規模を投じ、収益力の強化や、北米と中国を中心とした海外事業拡大などの野心的な計画に着手しているため、この問題はカルビーにとって極めて重大だという。

質素なジャガイモは、創業74年のカルビーの重要な収入源だ。年間数十万トンのジャガイモを使い、ピザからしょうゆまでさまざまな味のポテトチップスを製造している。

こうした商品は同社に年間何千億円もの売り上げをもたらす。昨年度の営業利益は222億円だった。

アジア太平洋地域では、カルビーは米飲料大手ペプシコ(同社はカルビー株式の約20%を保有。両社は長年資本業務提携を結んでいる)を除けば、他のどこのメーカーよりも多くのポテトチップスを販売している。 市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルのデータによると、同地域のポテトチップス市場におけるペプシコのシェアは約24%、カルビーは約12%。

両社は過去2年間、商品供給の断絶によって打撃を受けた。供給の断絶により2022年は食料価格が記録的に高騰し、トマトからコメ、桃に至るまでほぼ全ての商品に影響が及んだ。

専門家らはこれを現代史上最悪の食料危機と呼んだ。価格高騰はほぼ沈静化したものの、今後も不安定な状況が続くと警告している。

サプライチェーンの悪夢

カルビーは21年夏から22年秋にかけてジャガイモ不足に見舞われ、大きな危機に直面した。

この背景には、生産者が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)関連のサプライチェーン問題やブラジルの歴史的な干ばつ、世界的な植物油、砂糖、穀物の使用量増加といった問題に取り組む中で起こった歴史的な食料価格の高騰という世界情勢があった。

その後22年2月にはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、世界的に重要な穀物と植物油の輸出ルートが遮断された。

この危機により、記録的に高騰していた昨年の食品価格はさらに上昇し、国連食糧農業機関(FAO)がまとめたベンチマーク指数は05年以来の年間最高水準に達した。

カルビーは通常、ジャガイモの90%を日本で調達しているが、そのうちの80%は北海道産だ。

しかし北海道は21年に干ばつによる深刻な被害を受け、同社の国内ジャガイモ調達量は21年度に8%、22年度に14%減少した。

カルビーは、ジャガイモ調達量の残り10%を占める米国からの輸入を増やすことで不足分を補おうとした。だが、そううまくはいかなかったという。

世界的な輸送用コンテナの不足により、遅延が発生し、運賃も上昇した。

さらに悪いことに、21年後半には米国の太平洋岸北西部で起きた洪水の影響で、港では通常通りの操業が不可能となり、カルビーはジャガイモとポテトフレークを入手することが困難となった。乾燥させたマッシュポテトを加工した白色のポテトフレークは、サクサクした食感で人気のスナック菓子「じゃがりこ」に使われる。

結果として、カルビーは販売促進や新商品の発売を中止し、調達・輸送コストの上昇を受け入れざるを得なくなった。こうした試練により、22年3月期の営業利益は前期比7%減となった。

解決策を模索

カルビーはジャガイモの供給強化に向け、日本全国の生産者と協力し、30年までに国産ジャガイモの調達量を年間32万トンから40万トンに増やすことを目指している。

江原氏は、同社にとって天候は非常に重要だと説明。悪天候によるジャガイモ不足といった事態を回避するためにも、カルビーは現在、北海道以外の地域でのジャガイモ調達量を増やそうと模索していると同氏は述べている。

同社はまた、唯一の輸入先だった米国からのジャガイモ調達量が半減する可能性があると試算している。

広報担当者は、この動きはパンデミックの最中に経験した混乱への対応策だと説明した。

江原氏によると、同社はさらなる多角化を図るため、欧州など他の市場からの輸入も検討しているという。

FAOが発表した5月の世界の食料価格指数は、「ほぼ全ての穀物、植物油、乳製品」の価格が大幅に下落し、およそ1年ぶりに最低水準に低下した。この傾向は6月も続いたが、7月には食料価格が再び上昇し、不安定な状態が続いていることが浮き彫りになった。

江原氏はジャガイモやパーム油の価格も安定したと述べている。

安定供給は、同社の野心的な改善計画には不可欠だ。

カルビーの売上高は近年頭打ちとなっている。これに対処するため、同社は2月、自動化や海外事業展開などの分野に3年間で約1400億円を投じると発表した。

同社は特に米国市場の見通しに強気だ。カルビーは植物由来の人気スナック菓子「ハーベスト・スナップス」をウォルマートやホールフーズなどの小売り大手で販売している。

同社の海外事業部門で常務執行役員を務める笙啓英氏によると、カルビーは中国市場では韓国でヒットしたハニーバターチップなどの商品で得た牽引(けんいん)力をさらに高めたいと考えている。

また同社は、生涯顧客になり得る若年層が多いインドネシア市場についても強気であると笙氏は言い添えた。

ユーロモニターのアジア太平洋地域部門でフードインサイツマネジャーを務めるエミール・ファジラ氏は、ジャガイモの 「豊富な供給」 は特に米国市場にとって極めて重要だと指摘する。

「米国だけでも、小売売上高は日本の5倍という巨大な市場がある」 と同氏は指摘。スナック菓子事業は利益率が低く、新しいフレーバーやブランドが頻繁に発売されるなど、激しい競争が繰り広げられていると説明した。

またファジラ氏は、他社のポテトチップスブランドのみならず、ポテトチップス以外のスナック菓子と競争するためにも、店の商品棚には自社の商品を常に並べておくことが不可欠だと述べている。

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