大人向けの塗り絵が流行 人気の背景は
(CNN) 大人向けの塗り絵本が流行している。大人の注目を集めるきっかけとなったのは、子どもに人気のクレヨンメーカー「クレヨラ」社だ。同社は昨年12月、マーカーや色鉛筆と大人向けの塗り絵本をセットにした「カラーリング・エスケープス」を発売した。
商業的に成功した最初の塗り絵本が発売されたのは2012~13年。だが、これまでニッチ的な趣味だった大人の塗り絵は今や、全面的な流行になった。大学の研究者やヨガ雑誌の編集者が、瞑想(めいそう)に代わる手法として塗り絵を推奨している。流行の背景には、アートセラピーの影響がある。
米アートセラピー協会はアートセラピーについて、芸術作品を生み出す過程で「気持ちを探り、感情的な葛藤を解消し、自己意識を醸成し、行動や中毒症状を管理し、社会的なスキルを高め、現実への向き合い方を改善させ、不安感を減らし、自尊心を高める」技能だとしている。基本的には従来のセラピーと一緒だ。ただ、アートセラピーは学びを得たり自己を向上させたりするだけでなく、自分を表現するための手段でもある。
だが、大人の塗り絵本とアートセラピーのセッションは厳密には同じではないので注意が必要だ。米ニューヨーク大学の臨床准教授でアートセラピストとしての資格も持つメアリーグレース・バーベリアン氏は、「アートセラピーは患者とセラピストの関係に立脚したものなので、塗り絵それ自体はアートセラピーとは言えない」と指摘する。
アートセラピー協会の学会誌によれば、アートセラピーが実践され出したのは1940年代。一方、塗り絵をセラピーの手段として使うことに関する研究は、90年代半ばに始まったばかりとされている。