ビッグバン後最初の分子イオン、宇宙空間で検出
(CNN) 138億年前のビッグバンによって宇宙が誕生した際、その後の化学反応で生じた最初の分子イオンが、このほど研究者らによって宇宙空間で検出された。17日刊行の科学誌ネイチャーに掲載された論文が詳細を伝えている。
ビッグバン後には水素化ヘリウムイオン(HeH+)が最初の分子イオンとして形成されたと長く考えられてきたものの、それを示す証拠は見つかっていなかった。
HeH+はヘリウム原子と陽子が結合したもので、時とともに崩壊し、水素分子とヘリウム原子に分かれたとみられる。水素とヘリウムは、宇宙空間でそれぞれ1番目と2番目に多く存在する元素。
HeH+の存在自体は1925年に実験室で実証されたが、宇宙空間で検出されたのは今回が初めてだ。地上の望遠鏡では大気の存在のために検出が難しいとして、研究者らは下層大気の上を飛行する遠赤外線天文学成層圏天文台(SOFIA)を使用。SOFIAに搭載された高分解能の分光計GREATで、惑星状星雲「NGC7027」の中にあるHeH+を検出した。
米ジョンズ・ホプキンズ大学で物理学と天文学を研究し、今回の論文の共著者を務めたデービッド・ニューフェルド教授は声明で「HeH+の発見が劇的、かつ見事に証明してくれたのは、物質界の傾向に基づいて分子が形成されたという事実だ」と強調。「水素と、反応性の低い希ガス元素のヘリウムが混ざり合い、数千度の高温という過酷な環境にさらされて、はかない存在の分子が生まれた」と説明した。
同じく論文の著者で天文学者のロルフ・ギュステン氏は「宇宙における化学はHeH+から始まった。その存在を示す確たる証拠が宇宙空間で見つからなかったのは、天文学者にとって長年のジレンマだった」と語った。