ローマ帝国の興隆、アラスカの火山噴火が一因? 氷の中の火山灰を解析
(CNN) 古代ローマのユリウス・カエサルの暗殺から数年間、地中海地域の歴史記述には、まれに見る寒冷な気候や食糧不足、疫病の蔓延(まんえん)、飢饉(ききん)といった出来事が描かれている。このような状況でローマの政治体制は共和政から帝政へと移行。西洋史における重大な転換がなされるに至った。
歴史家たちは長年にわたり、この時の極端な気候が火山の噴火に関連するものなのではないかと考えてきた。しかしそれがいつ、どこの火山で発生し、どれほどの被害をもたらしたのかは明らかにできていなかった。過去にはニカラグア、シチリア島、ロシア極東カムチャツカにある火山などがその候補に挙がっている。
今回、科学者と歴史学者の国際的なグループが氷の中に閉じ込められた火山灰などの記録を分析。2000年以上前に起きた米アラスカ州のオクモック火山の噴火が異常気象の原因だったとする結論を下した。この時の噴火でできた直径10キロの巨大なクレーターは、現在にまでその姿をとどめている。
衛星画像がとらえたオクモック火山の直径10キロのクレーター(右上)=2014年5月3日/US Geological Survey
元老院でのカエサルの殺害を契機に、古代ローマでは権力闘争が起き、結果的に共和政は終焉(しゅうえん)を迎えた。代わってローマ帝国という独裁的な政治体制が確立され、古代エジプトはその支配に服することになった。
研究によれば噴火で生じた異常気象がもたらす穀物の不作、飢饉、疫病は当時の社会不安を増大させ、政治勢力の再編に道を開いた公算が大きい。
研究論文を執筆した米ネバダ州デザート・リサーチ・インスティテュートのジョー・マコンネル氏は、実際に証明することこそできないものの、異常気象などの一連の事象が2000年前の共和政の崩壊に重要な役割を果たしたと考えるのは論理的に思えるとの見解を示した。
研究チームは北極の氷に閉じ込められた「テフラ」と呼ばれる火山灰をグリーンランドとロシアから採取。地中海地域が異常気象に見舞われた年代の火山灰について化学的な特徴を調べたところ、アリューシャン列島に位置するオクモック火山に起源を持つことが明らかになった。
グリーンランドの氷床に閉じ込められた火山灰から、過去の巨大噴火についての分析が行われた/Dorthe Dahl-Jensen
上記の噴火は紀元前43年に発生。論文によれば火山灰の影響は2年にわたって続き、北半球の気温は最大で通常より7度低下したという。
論文は22日発行の米科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。