ＮＦＬ選手の卒業式スピーチで炎上、女性やスウィフトのファンが猛反発

（ＣＮＮ） 米プロフットボールリーグ（ＮＦＬ）カンザスシティ・チーフスのキッカー、ハリソン・バッカー選手（２８）が、大学の卒業式で行ったスピーチをめぐり物議をかもしている。ＮＦＬはこの発言と距離を置く姿勢を示した。

バッカー選手はＬＧＢＴＱの権利を啓発するプライド月間を「大罪」と呼び、多様性と平等の取り組みを嘆き、女性はキャリアを追求するよりも結婚して子どもを産んだ方が満たされるといった趣旨の発言を展開。同僚の恋人でもあるポップスター、テイラー・スウィフトの楽曲を引用してファンの怒りを買った。

スピーチは１１日、カンザス州にあるカトリック系の大学ベネディクティン・カレッジの卒業式で行った。

ＮＦＬは１５日に声明を発表し、バッカー選手の発言について「組織としてのＮＦＬの見解ではない」と強調している。

チーフスは今年のスーパーボウルで連覇を果たした強豪チーム。バッカー選手のＳＮＳには女性やテイラー・スウィフトのファンから非難のコメントが殺到しており、女性ファンが増えつつあるＮＦＬにとってもチーフスにとっても大きな問題になりかねない。

バッカー選手は卒業生の男女４８５人を前に行ったスピーチで、女性に向かってこう語りかけた。

「今ここにいる皆さんのうち何人が、自分のキャリアで得ようとする昇進や肩書のことを考えているでしょうか。世界中でキャリアを成功に導く人もいるかもしれませんが、ほとんどの皆さんは、結婚と、自分がこの世界に送り出す子どもたちのことを最も楽しみにしていると思います」

バッカー選手はさらに、妻のイザベラさんを賞賛し、イザベラさんは「妻として、母としての天職を生き始めてから本当の人生がスタートしたと言うでしょう」と語った。

しかしこの発言をめぐってバッカー選手のインスタグラムに殺到した何百ものコメントや、ＸやＴｉｋＴｏｋの投稿から察すると、バッカー選手の発言を不快に思った人は多かった。

「これは失言ではない。入念に準備されたスピーチだった」。地元紙カンザスシティ・スターのコラムニスト、サム・マクダウェル氏はそうコメントしている。「聴衆の女性たちは、卒業の日に卒業証書で報われるのではなく、彼が主婦の役割を宣伝する内容を聞かされた。許容される選択肢としてではなく、夫に仕える義務として」

バッカー選手がテイラー・スウィフトに言及したことも、ファンの神経を逆なでした。チーフスのスター、トラビス・ケルシー選手と交際しているスウィフトは、頻繁に試合観戦に訪れている。

バッカー選手のスピーチでは、カトリック教会の神父が教会区民の感情に寄り添い過ぎていると批判する文脈で、スウィフトの楽曲「ビジュエルド」の歌詞にも使われている一節を引用。「私のチームメートの彼女が言うように、『Ｆａｍｉｌｉａｒｉｔｙ　ｂｒｅｅｄｓ　ｃｏｎｔｅｍｐｔ（なれ合いは軽蔑を生む）』と述べていた。

保守層からは「１００％正しい」と称賛する声もある。しかしスウィフト（バッカー選手の見解によれば、子どもがいない未婚のスーパースターでフェミニスト、自分の潜在力を発揮できていない）に言及したことで、バッカー選手の発言は一層の炎上を招いている。