Architecture

趣味は「違法登頂」?、世界の超高層ビルに登り続けるロシア人カップル

「スカイウォーカーズ」は著名な高層ビルに登るカップルを追うドキュメンタリー映画

「スカイウォーカーズ」は著名な高層ビルに登るカップルを追うドキュメンタリー映画/Courtesy Netflix via CNN Newsource

(CNN) 2016年、サグラダ・ファミリアやエッフェル塔など、高さでめまいがするような名所を違法に登ろうとする過激な「ルーフトッピング」アドベンチャーで知られる二人の若いロシア人が、中国で最も高い未完成の超高層ビル、高さ約597メートルの「高銀金融117」に登った。

当時、イワン・ビアカスさんとアンジェラ・ニコラウさんは、やがて二人が一緒になることになるとは思ってもいなかった。ビアカスさんは、ルーフトッピング・コミュニティーでは珍しい女性メンバーであるニコラウさんを、スポンサー付きのソーシャルメディア投稿を作成するために登頂に誘った。だが、それは長く続くロマンチックでクリエーティブなパートナーシップの始まりであり、二人は何千マイルもの距離と、何千フィートもの高さを共に旅することになった。

8年後、ドキュメンタリー映画「スカイウォーカーズ:ある愛の物語」では、何百時間にも及ぶ映像を通じ、二人の一風変わったロマンスに迫った。もちろん、その中にはありえない高さからの胸が張り裂けるようなPOV映像(主観撮影)や、警察とのもめ事も時折含まれている。

珍しい女性のルーフトッパー、ニコラウさんはソーシャルメディア投稿の相手役を探していたビアカスさんの目に止まった/Courtesy Netflix via CNN Newsource
珍しい女性のルーフトッパー、ニコラウさんはソーシャルメディア投稿の相手役を探していたビアカスさんの目に止まった/Courtesy Netflix via CNN Newsource

すべてのカップルと同じように、ビアカスさんとニコラウさんにも浮き沈みがあり、言い争いになる時は他のカップルよりも少しだけ危険が増す(あるシーンでは、ビアカスさんが、文字通り雲の上で危険なアクロバティックなポーズを取ろうとしているニコラウさんに「ネガティブすぎる」と勇敢に非難した)。二人の一味変わったライフスタイルを通して、「スカイウォーカーズ」は信頼や献身の意味を問う一つの瞑想録になるが、スタント好きであれば、二人の大胆な行為には手に汗をかくことになるだろう。

自身もルーフトッピングの経験を持つ映画監督ジェフ・ジンバリスト氏が監督し、マリア・ブコニナ氏が共同監督を務めた「スカイウォーカーズ」は、今年1月にサンダンス映画祭で初公開され、現在はネットフリックスで配信中だ。同作品では、体操選手として訓練を受けたニコラウさんの経歴を生かし、狭い棚やポール、足場でのアクロバティックなスタントを披露する二人が、次第に困難な課題に挑み、芽生えつつある関係を切り開いていく様子を描いている。

二人はパリで短期間拘束された他、クアラルンプールでも警察の注意を引いた/Courtesy Netflix via CNN Newsource
二人はパリで短期間拘束された他、クアラルンプールでも警察の注意を引いた/Courtesy Netflix via CNN Newsource

「高所から落ちる恐怖というよりも、恋に落ちる恐怖を描いている」とジンバリスト氏はCNNとのビデオ通話で語った。「アンジェラは最初、二人は競争相手でライバルだと言っていた。だが水面下では、湧き上がるような恋心を感じていたようだ」

建築への挑戦

ドキュメンタリーが進むにつれ、二人はこれまでで最も困難な登頂を計画した。クアラルンプールにある世界で2番目に高いビル「ムルデカ118」だ。今年初めに開業した高さ約679メートルのきらびやかなタワーは、約160メートルの尖塔(せんとう)を頂点としており、その頂上には内部の狭いはしごでしか登ることができない。

二人が登頂を計画した22年、この「超高層」ビルは完成時の高さに到達していたが、まだ建設中だった。警備を逃れて安全に頂上に到達するには、綿密で手の込んだ計画が必要だった。(登頂当時、タワーの所有者は警察が二人を不法侵入で捜査していると述べたが、マレーシア当局はさらなる法的措置が取られたかどうかについてCNNに回答しなかった)

「スカイウォーカーズ」は二人の動画と映画スタッフが撮影した映像を組み合わせている/Courtesy Netflix via CNN Newsource
「スカイウォーカーズ」は二人の動画と映画スタッフが撮影した映像を組み合わせている/Courtesy Netflix via CNN Newsource

ルーフトッピングは、危険性と不法侵入の両方で物議を醸す娯楽である。この都市型「スポーツ」はソーシャルメディアで高評価を獲得するための過激な手段の一つとして登場し、悲惨な死者も出ている。

「スカイウォーカーズ」では、撮影クルーが二人に同行してスタントを記録したが、それには限度があった。ジンバリスト氏は、クルーが危険にさらされたり、二人の邪魔になったりしないようにチームの安全対策を強調した。

「我々はイワンとアンジェラと何度も話し合い、『普段やっていること以上のクレージーなことはしないでほしい』とお願いした」「我々にとって、これはムルデカやその他の登頂に成功するかどうかについての映画ではない。ここでの真のサスペンスは、お互いを信頼することを選択するかどうかということなのだ」とジンバリスト氏は語っている。

「精神の広がり」

二人にとって、ルーフトッピングはスリルを求めるためだけのものではない。サーカス団員の娘であったニコラウさんは、映画の中で、自分の限界に挑戦することは幼少期から身についており、常に自分を向上させるよう努めていると語っている。モスクワで何年も一人でビルを登ってきたビアカスさんにとって、ルーフトッピングは精神的な明晰(めいせき)さをもたらしてくれるという。

「高いところに登れば登るほど、呼吸が楽になった」と、ビアカスさんはカメラに向かって、初期の登頂を思い出しながら語った。「この極限の生活、この精神の広がりは、私にとって欠かせないものなのだ」

作中で二人はルーフトッピングをする動機について、単にスリルを求めるだけではないより複雑な要因があると強調する/Courtesy Netflix via CNN Newsource
作中で二人はルーフトッピングをする動機について、単にスリルを求めるだけではないより複雑な要因があると強調する/Courtesy Netflix via CNN Newsource

ジンバリスト氏はルーフトッピングの危険性を認識しており、自身の映画は「批評家から彼らの行動を擁護する」ためのものではないと語る。

その代わりに、ジンバリスト氏は「スカイウォーカーズ」が愛と信頼にまつわるメッセージに加え、登頂者たちの「洗練された」ソーシャルメディア投稿の裏にある懸命な努力と計画の貴重な姿を提供することを望んでいる。

「どんな危険な活動でも、ソーシャルメディアはその難しさを覆い隠す傾向がある」とジンバリスト氏は言う。「スタントの裏にある物語を伝えることは、その背景と、一部のスタントがいかに挑戦的で危険であるのかを示す助けとなる」

実は高所恐怖症だというニコラウさんは、これまで恐怖心を克服し続けなくてはならなかったと語る/Courtesy Netflix via CNN Newsource
実は高所恐怖症だというニコラウさんは、これまで恐怖心を克服し続けなくてはならなかったと語る/Courtesy Netflix via CNN Newsource

信じられないかもしれないが、ニコラウさんは高所恐怖症であると主張している。これは、自身が選択した仕事を続けるために、何度も直面しなければならなかったことだ。

「恐怖は本当に消えたわけではない。ただそれに向き合うことが段々と上手になっただけだ」とニコラウさんは動画の中で説明している。

「スカイウォーカーズ」の制作者らは、我々が近くの高層ビルに登ることを望んでいるわけでは恐らくないだろう。この映画は我々に勇気を与え、最も恐れているものに「イエス」と言うよう促しているのだ。

原文タイトル:This couple’s hobby? Illegally scaling the world’s tallest buildings together(抄訳)

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