Architecture

「自然の中のホテル」、世界最高の新高層ビルに

「世界で最も優れた新高層ビル」に選ばれた「パン・パシフィック・オーチャード」

「世界で最も優れた新高層ビル」に選ばれた「パン・パシフィック・オーチャード」/Darren Soh

シンガポール(CNN) 熱帯植物が巨大な柱をはい上がり何百メートルもの高さにある棚からぶら下がり、ゲストは真昼の灼熱(しゃくねつ)太陽を避けてのラグーン風のプールでくつろぐ。建物内には、山腹に掘られた洞窟のように一連のテラスがそびえ立つ。

シンガポールの「パン・パシフィック・オーチャード」はこのほど、国際非営利組織(NPO)の高層ビル・都市居住協議会(CTBUH)によって「世界で最も優れた新高層ビル」に選ばれた。CTBUHはプレスリリースの中で、「高密度都市化への画期的なアプローチ」を実証した「自然の中のホテル」と評価した。

ビーチ・テラス」にはヤシの木々に囲まれたプールも/Darren Soh
「ビーチ・テラス」にはヤシの木々に囲まれたプールも/Darren Soh

高さ約140メートルの建物内部に広がる緑豊かなオープンエアの空間は、驚くほど親しみやすい雰囲気を感じさせる。設計を手掛けたシンガポールの建築事務所WOHAのホン・ウェイ・プア氏はCNNに対し、「ホテルを非常に大きな建物としてではなく、より身近な近隣のスケールとして体験できる」と述べた。

L字型の建物が4層に連なるユニークなデザインにより、都市型庭園や緑化スペースを確保。テラスはそれぞれ「フォレスト」「ビーチ」「ガーデン」「クラウド」と、シンガポールの熱帯環境を反映した自然のモチーフで構成されている。

通行人が唯一アクセス可能な地上階の「フォレスト・テラス」には、滝のような水景とシンガポールに自生する何十種もの植物種が配置されている。プア氏によれば、このタワーは従来の「ポディウム(基壇)とタワー」という一般的な高層ホテルのデザインとは一線を画す公共のジェスチャーとして設計されたという。

「ポディアムに到着して足を踏み入れるのは、入り組んだ空間や通路のような内部空間ではなく、森林空間だ」と同氏は述べ、建物については「シンガポールの有名でにぎやかなショッピング街、オーチャードの喧騒(けんそう)から離れたオアシスだ」と表現した。

タワー上階にある「ビーチ・テラス」にはヤシの木々に囲まれたプールがあり、「ガーデン・テラス」には長方形の芝生の周囲に散歩道が設けられている。最上階の「クラウド・テラス」は、市内を一望できる緑豊かなイベントスペースとして利用できる。

建物はオープンエアで、高温多湿でしばしば嵐に見舞われるシンガポールの気候に適応し、それぞれの階は下の階に対する日除けや雨除けの役割を果たしている。

ホテルはシンガポールの不動産大手UOLグループが所有・運営しており、客室数は347室。その多くには庭園エリアが見えるバルコニーが付いているほか、400席の宴会場、レストラン2軒、ソーラーパネルが設置された「キャノピー(張り出し屋根)」が設けられている。

近年、シンガポールは自然を取り入れた建築で評判を得ており、しばしば緑が高層ビルから生い茂る様子や、公共インフラに統合されている光景などが見られる。

高層ビルを新設する際、場所によっては、シンガポールの厳格な建築基準によって、建物に大量の緑を取り込むことが義務付けられている。オーチャードのような人口密度の高い地域では、空中庭園や植物で覆われた壁などを組み合わせ、敷地全体の面積に相当する緑地を確保しなければならない。

パン・パシフィック・オーチャードの緑地面積は、この法廷最低基準を3倍近く上回っている。

建築事務所WOHAが内装も手掛けた/Marc Tan
建築事務所WOHAが内装も手掛けた/Marc Tan

CTBUHのハビエル・キンタナ・デ・ウニャ最高経営責任者(CEO)は声明で、「パン・パシフィック・オーチャードは、今日の責任ある垂直都市主義の最高の例だ」と述べている。

原文タイトル:‘Hotel in nature’: Inside the world’s best new skyscraper(抄訳)

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