名画「モナリザ」の作者で、「万能の天才」と呼ばれたルネサンス期の巨匠レオナルド・ダビンチについて、注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状を抱えていたとする研究結果が、このほど英国とイタリアの研究者によって発表された。
英ロンドン大キングス・カレッジと伊パビア大学で神経解剖学や行動科学を専攻する研究者らは、史料の中に見られるダビンチの同時代人の説明などを分析。時間の管理や集中力、物事を先延ばしにするといったダビンチ自身の問題がADHDに関連するとの結論を導き出した。
本人の気性や、あらゆる分野に飛び込んで才能を発揮する特異な側面も、ADHDと結びつけて説明できるという。とりわけ顕著なのは様々な仕事に次から次へと手を付ける傾向で、一度のめり込むと夜通し作業し続け、睡眠をほとんどとらなくなる点も明確な特徴だとしている。
研究者らはこのほか、ダビンチが左利きで、65歳のときに左大脳半球の脳卒中を患ったにもかかわらず言語能力を失わなかったことに言及。これらの事実から、通常とは逆に右大脳半球によって言語をつかさどっていた可能性があるとした。このような特徴を備えている人は、全人口の5%に満たないという。
ダビンチについては、失読症だったことを示唆する過去の研究もある。上記の研究者らは、「大脳半球の優位性が通常と異なり、左利きで、失読症。こうした特徴はADHDをはじめとする神経発達の障害をもつ子どもたちに広くみられるものだ」と指摘した。
英バース大学心理学部のグレアム・フェアチャイルド氏はCNNの取材に答え、今回の研究について「ADHDの人であっても信じがたいほどの才能に恵まれ、多くの業績を残すケースがあるということを示している」と述べた。またダビンチが生涯にわたって前出の問題を抱えていたとみられることから、ADHDについて子どもの時期のみに見られる症状だという誤った認識も改まる可能性があるとした。
一方で、ADHDがダビンチの仕事の妨げになったのではないかとする研究者らの指摘に対しては異議を唱え「おそらく、休むことを知らない活力や創造性はADHDに由来するものであり、それこそダビンチがあれほどの業績を極めて多彩な分野で残すことができた理由ではないか。中途半端で終わる仕事も多かったにせよ」と付け加えた。