中国で巨額の制作費をかけた大作映画4本が、この1カ月の間に相次いで突如として上映中止になり、中国政府による検閲が入ったのではないかという臆測が飛び交っている。
中国の映画やテレビ番組に対する検閲はここ数年で厳格化の傾向が強まり、同性愛や女性の胸の谷間、ヒップホップ、タトゥーなどを理由に禁止される作品が続出していた。
しかし今回上映が中止された4本は、いずれも一般的にタブーとされる描写はなく、映画ファンは首をひねっている。
4本のうち「八佰」「刀背藏身」は戦争映画、「The Last Wish」は死を宣告された男性が脱童貞の願いをかなえようとするブラックコメディー。「Better Days」はチンピラと親しくなる高校生の物語だった。
いずれも上映中止の理由についてはあいまいな説明しかなく、ソーシャルメディアには落胆の声が相次いで投稿された。
制作費は公式には発表されていないものの、「八佰」だけで米ドルにして推定8000万ドル(約87億円)と伝えられている。
匿名で取材に応じた外国映画制作会社の中国支部幹部は、中国共産党が10月1日の建国70周年を控え、神経をとがらせているのではないかと推測する。
例えば「八佰」は抗日戦争を戦った中国国民党の兵士を描いた映画だが、中国の国共内戦で共産党と戦ったのも国民党の兵士だった。
映画会社の幹部は「状況は今後も悪化の一途をたどるだろう」と予想している。