初代ローマ皇帝アウグストゥスをかたどった2000年前の大理石の頭部像が、イタリア南部モリーゼ州のイゼルニアで発見された。
考古学者のフランチェスコ・ジャンコラ氏がこの類いまれな発見をしたのは、2013年の豪雨で崩れた中世の壁を修復していた時のことだった。
ジャンコラ氏はイゼルニアの地元自治体のために修復作業に携わっていたが、6日のCNNの取材に語ったところによると、これほど大きな発見があるとは予想していなかったという。
「壁の後ろを掘っていた時に、地面の色が変わったのが見えた」(ジャンコラ氏)
「そのまま精密なこてで掘り進めたところ、大理石の塊が出てきた。髪型や目の形と彫り方から、アウグストゥス像の頭部であることがすぐに分かった」
発見を受け、ジャンコラ氏は直ちに当局や地元首長、文化遺産省に報告した。
文化遺産省でこの地域を担当する考古学者、マリア・ジレッタ・コロンボ氏によれば、高さ35センチの頭部は紀元前20年から紀元後10年にかけての時期のものと考えられる。
「重要な石像だが、ここにあった理由は分からない」「皇帝一家にささげられた神殿か、あるいは広場に設置されていた可能性もある。ただ、広場の場所が分かっているわけではないので、これらは仮説に過ぎない」
頭部像は町の壁の改修中に発見された/MIBACTmolise/Facebook
コロンボ氏はまた、同僚の中には発見のうれしさのあまり泣く人もいたと明かし、永遠に記憶に残る瞬間になったと振り返る。
同氏によると、頭部は2メートル以上の高さの石像から分離した可能性が高い。材料にはイタリアルネサンスの芸術家、ミケランジェロが使ったのと同じルニジャーナ地方の大理石を使い、紀元前27年に初代ローマ皇帝となったアウグストゥス(オクタビアヌス)の若き日の姿をかたどっている。
イゼルニアは古代世界では「アエセルニア」の名称で知られ、サムナイトと呼ばれるイタリック人の部族が住んでいた。その後はローマの植民地になった。第2次世界大戦中に一部が破壊されたものの、現在では再建されている。
首長のジャコモ・ダポロニオ氏はCNNの取材に、「イゼルニアには非常に古い歴史があり、都市全体の下に考古学遺跡が残っている」と説明。「(頭部像は)この場所に一定の重要性を持つ建物があったことを示すもので、非常に重要な発見となる」との見方を示した。
発掘作業では中身のない中世の墓や、テラコッタも出土したという。
頭部像については現在調査が進められている。ダポロニオ、コロンボ両氏とも、地元のサンタ・マリア・デッレ・モナケ博物館で保管したい考えで、大勢の観光客を引きつける所蔵品になると期待を寄せている。
「イゼルニアは主要な観光地ではないが、旧石器時代から豊かな歴史のある地域だ」(ダポロニオ氏)
アウグストゥスは最終的に、英国からエジプトにまたがる帝国を築いた。死の床で「私はレンガのローマを大理石のローマに変えた」と豪語したとされる。