Arts

若いアフガン人アーティストが描く忘れがたいイメージ

アフガニスタンの美しさとカブール陥落の悲劇をモチーフに描かれたラフマニさんの絵画

アフガニスタンの美しさとカブール陥落の悲劇をモチーフに描かれたラフマニさんの絵画/sara_official_artgallery/Instagram

イスラム主義勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧する2~3日前、サラ・ラフマニさんは自由時間にスケッチをしていた。場所は米カリフォルニア州の自宅だが、その心は数千キロ離れたアフガニスタンにある。

「最初に描いたのは美しい少女の絵だった。いつもの通りに。というのも私は、自国の人々と文化が持つ美しい面を表現するのが大好きだから」。ラフマニさんはそう語った。「下絵から始めて、表面を塗り、瞳に色を付けた。2~3日が経ち、カブールが制圧されると、ものすごく心が痛んだ」

ラフマニさんと家族は4年前、特別移民ビザ(SIV)で米国にやってきた。父親が米国の企業で働いていた。現在、ラフマニさんは土木工学の学校に通いながら、趣味で芸術を楽しんでいる。

米国にわたる前も、カブールで土木工学の授業を受けていた。その街で、人生の大半を過ごした。「大学や一緒に勉強していた女子学生たちに対して非常に心を痛めている」「彼女たちは本当に不満を募らせていて、大変な苦境にある。この先何が起きるのかもわからない」(ラフマニさん)

ラフマニさんによると、大学で共に学んだ若い女性の多くはオフィスワークをしていたが、今は職を失って苦しんでいる。着たいものを着られず、外出も男性同伴でなくてはならないといった話を聞かされるという。

自ら描いた絵に視線を向けると、ラフマニさんの声には感情が満ちあふれた。

ラフマニさんの作品。差し込む光の中にアフガニスタンの美しさも表現されている/sara_official_artgallery/Instagram
ラフマニさんの作品。差し込む光の中にアフガニスタンの美しさも表現されている/sara_official_artgallery/Instagram

作品の左下にはアフガニスタン国旗の色を取り入れた。伝統衣装をまとった女性2人。編んだ髪やアクセサリーで、アフガニスタンの豊かな文化を表現しているという。女性のうちの1人は伝統舞踊を踊っている。アフガン人が婚礼などの特別な行事で披露する踊りだ。もう1人の女性はペルシャ語で「平和」を意味する文字を書いている。アフガン国旗の黒い部分がちょうど黒板のように見える。

続けてラフマニさんは、画面中央の少女を指さした。

「この少女の肖像を最初に描いたけれど、やがて本当に悲しいものになった」と、ラフマニさん。「光が差し込んでいるときは良い面が見える。私にとってのアフガニスタンの良い面、タリバンに支配される前の国の姿がそこにある。少女は幸福で、他の子どもたちと遊んで手が汚れている」

画面上の黄色い花を指さしながらラフマニさんは説明した。「このきれいな花は、彼女が祖父からもらったもの」。少女が頭に巻くスカーフの色は緑。アフガン人にとって平和、喜び、幸福を意味する色だという。「青い空は平和に満ちあふれている。晴れた日々。幸福と鳥たちが飛び交っている。軍用機ではなく」

しかし、画面右側に灰色で描かれているのは、カブールから退避する混乱の中、米軍機から落下したと報じられた人々の絶望的な姿だ。彼らの下には、「渡航に必要な書類を携え、空港のゲートで待つ大勢の人々。そんな書類を何も持たない人もいる。それから赤ん坊を(フェンス越しに)手渡そうとする男の人。次の世代が平和に生きられる道を確保しようという行動だ」(ラフマニさん)

作品から目を上げて、ラフマニさんは続ける。「米国の方が居心地はいい。でも一方で、自分の国ではない奇妙な感覚も抱く。言葉も文化も、何もかもが違う。たとえ経済的な安心感は得られても、何かが心の中から失われている。それこそが母国であり、何をもってしても代えられない」

ラフマニさんの目に涙が浮かび、頬を伝ってこぼれ落ちる。「世界にこのことを知ってほしい。罪のない人々が殺されている。彼らは母親を失い、我が子を失った。いつになったらこんなことが終わるのか?」

今はアフガニスタンに残る家族や友人のことを考えるというラフマニさん。「この10日間ずっと、もう日が経つのも分からなくなるくらい、とにかく家族を出国させることしか頭にない。現地は恐ろしい状況にある」

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