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ハドリアヌス帝の時代のフレスコ画、古代ローマの浴場でお披露目

2000年近く前のローマ皇帝ハドリアヌスの時代にさかのぼるフレスコ画が遺跡「カラカラ浴場」を訪れる人に公開される

2000年近く前のローマ皇帝ハドリアヌスの時代にさかのぼるフレスコ画が遺跡「カラカラ浴場」を訪れる人に公開される/Fabio Caricchia

今から2000年近く前のローマ皇帝ハドリアヌスの時代にさかのぼるフレスコ画が、古代ローマの遺跡「カラカラ浴場」を訪れる人に公開されることになった。

ローマ特別監督局のルカ・デル・フラ報道官は「来訪者は今回初めて、崩壊した住宅の第2の部屋の天井に描かれていたフレスコ画の一部を鑑賞することができる」と話す。

ワインの神などとしても知られるディオニュソス/Fabio Caricchia
ワインの神などとしても知られるディオニュソス/Fabio Caricchia

「このフレスコ画は古代ローマの食堂である『トリクリニウム』の天井になっていた。考古学者が復元した部分には、赤い色を背景に(古代ギリシャの神)ディオニュソスが描かれている」(デル・フラ氏)

フレスコ画が描かれたのはカラカラ浴場ができる前のことで、浴場建設のために破壊された地区の住宅に飾られていた。浴場は216年に落成され、「カラカラ」の名で知られるマルコ・アウレリオ・アントニオ・バッシアーノにちなんで命名された。カラカラは皇帝セプティミウス・セウェルスの息子。

この浴場は「大帝国浴場」と呼ばれる配置に従っており、中央に温水浴場専用の区画が設けられ、「カルダリウム」「テピダリウム」「フリギダリウム」「ナタティオ」という温度も目的も異なる施設が順番に並んでいた。ナタティオは野外浴場のことで、五輪の水泳競技場ほどの大きさがあった。

フレスコ画には人間の姿も/Fabio Caricchia
フレスコ画には人間の姿も/Fabio Caricchia

他の区画はウォーキングや勉強、スポーツに使用されていたという。

2つあるフレスコ画はそれぞれ別々の時代に描かれた。一つ目はハドリアヌスの時代に典型的なもので、人物や彫像、元気な猫のいる建築物を立体的に再現している。

二つ目のフレスコ画はその約50年後に制作され、ギリシャ・ローマ世界の神々とエジプトの神々を一緒に描いている。声明によると、どちらも富裕な一家が保有していたことがうかがえるという。

死と冥界の神アヌビス/Fabio Caricchia
死と冥界の神アヌビス/Fabio Caricchia

デル・フラ氏はCNNに対し「一つはギリシャ・ローマ的な伝統(ユピテルとユノ、ミネルワ)、もう一つはエジプト的な伝統(アヌビスとイシス、おそらくセラピス)に属する異なる神々のグループが共存していることは驚き」と説明。「これは当該住宅を所有していた家族がエジプトと密接な関係があったことを示している可能性がある」と語った。

ギリシャ・ローマ的な伝統を体現するのは空の神ユピテル、その妻で結婚をつかさどる守護神ユノ、知恵の女神ミネルワの面々だ。エジプトの側には死と冥界の神であるアヌビスと豊饒(ほうじょう)と母性の女神イシスがいて、エジプトのギリシャ人とエジプト人を団結させるために使われていた習合神セラピスも描かれている可能性がある。

カラカラ浴場の責任者ミレラ・セルロレンジ氏は、同一の芸術作品の中に2つの異なる伝統に由来する神々が共存するのは「古代ローマの創建当初から典型的にみられる宗教的習合」の特徴だと語った。

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