ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊で、覆面アーティストのバンクシーによる壁画を盗もうとしたとされる集団の首謀者は、最長で禁錮12年の刑を言い渡される可能性がある。同国の内務省が2日の声明で明らかにした。
容疑者の氏名は明かされていない。警察に拘束された当該の集団は先月、ロシアの砲撃で破壊された家屋の壁からバンクシーの制作した壁画を撤去しようとしていた。この家屋はキーウ近郊のホストメリにある。
集団は壁画を切り出し拘束された/Andrey Nebitov/Telegram
ガスマスクを着け、消火器を手にした女性を描いたこの壁画は、バンクシーがキーウを含むウクライナ全域の街でロシアによる侵攻以降完成させた作品のうちの一つ。
警察によると犯行集団は壁画を壁から切り出し、木の板などを使って運び出そうとしていた。容疑者らはキーウや中部の都市チェルカースイ出身で、「現行犯逮捕された」。キーウ州のクレバ知事が先月初めの逮捕時に述べた。
逮捕を受け、クレバ知事はSNSテレグラムの自身のチャンネルに「これらの壁画は、敵に対する我々の苦闘を象徴するものだ」と投稿。壁画自体は無傷だと付け加えた。「これらの作品が語るのは、文明世界全体の支援及びウクライナとの連帯に他ならない。ストリートアートの作品を守るため手を尽くそう。それらは我々が将来手にする勝利の象徴だ」
2日の声明は容疑者らの逮捕について、「地元住民や警察、その他治安要員が目を光らせていたおかげ」と述べた。内務省はまた、その後の調べで当該の壁画に900万フリブナ(約3200万円)を超える価値があると評価されたと明らかにした。
昨年11月、バンクシーは積み上がった瓦礫(がれき)の上でバランスを取る女子体操選手の壁画を公開していた。この作品はロシア軍から解放された町ボロジャンカにある破壊された建物の壁に描かれた。
壁画はロシアからの砲撃で損傷した建物から切り出された/Andrey Nebitov/Telegram
バンクシーはアート・ニューズペーパーの取材に対し、ウクライナで計7点の作品を完成させたことを確認した。そこにはロシアの砲撃による破壊の痕の中で入浴する男性を描いたホレンカ村にある壁画などが含まれる。
インスタグラムに投稿した動画の中で、バンクシーはウクライナにいる自身の様子を紹介。投稿には「ウクライナの人々と連帯している」とのメッセージが添えられている。