アーティストのジェフ・クーンズ氏が手がけた有名な彫刻「バルーン・ドッグ」は、風船でできているように見えるかもしれない。しかし実際には壊れやすい作品だった。4万2000ドル(約560万円)超の価値があるこのクーンズ作品は16日、展覧会の入場者がつまずいたことで粉々に砕け散った。
同作品を保有するギャラリーによると、クーンズ氏が制作した青いバルーン・ドッグは、入場者がうっかり台座につまずいたことで、粉々になった。
ベルエア・ファインアートは、米マイアミの現代アート展覧会「アート・ウィンウッド」の自社ブースでこの作品を展示していた。
アート・ウィンウッドのブースを管理している同ギャラリー現地マネジャーのセドリック・ボエロ氏が電子メールを通じてCNNに寄せた声明によると、同ギャラリーは「有名なジェフ・クーンズ氏のバルーン・ドッグ彫刻の公式代理店の一つ」だった。
「当然ながら、これほど象徴的な作品が破壊されたことに心を痛めている」とボエロ氏はコメントしている。
同氏によると、このブースを訪れたある収集家が16日夕、展覧会オープニングのカクテルアワーの最中に、意図せず台座につまずいた。
作品は台座に載せて展示されていた/Bel-Air Fine Art Contemporary Art Galleries
「この収集家に彫刻を壊す意図は決してなかった。実際のところ、彼女は手でこれに触れていない」と同氏は説明する。「オープニングカクテルだったので、我々のブースには大勢の人がいて、彼女は意図せず台座を少し蹴った。彫刻が落下するにはそれで十分だった」
「残念ながら、こうしたことは起きるものだ。だからこの作品には保険がかけられていた」(同氏)
同ギャラリーは、この彫刻が磁器の破片となって床に散らばった写真を公開した。同ギャラリーによると、破片は現在、箱に入れて保管され、保険の専門家による鑑定を待っている。数人の収集家から、粉々になった作品の買い取りの申し出があったとベルエア・ファインアートは言い添えた。
ベルエア・ファインアートからのメールによると、2021年のこの作品は「バルーン・ドッグ(青)」と名付けられ、4万2000ドル前後の価値がある。彫刻は磁器製で大きさは40×48×16センチ。シリーズ作品は合計799点が制作されている。
壊れる前の作品の様子/Bel-Air Fine Art Contemporary Art Galleries
CNNはクーンズ氏とアート・ウィンウッドにコメントを求めたが、すぐには返答はなかった。
クーンズ氏のバルーン動物作品は、世界の現代アート界で有数の象徴的な――そして高額な――彫刻だ。オークションでは目を見張るような高値で落札されている。「ラビット」(1986年)は2019年、米ニューヨークで開かれたクリスティーズのオークションで9100万ドルで売れ、「バルーン・ドッグ(オレンジ)」(1994~2000年)はその6年前、5840万ドルの値が付いた。
同氏はバルーン・ドッグのシリーズ作品を数百点制作している。中には高さ3メートルを超す作品もあれば、今回粉々になった彫刻のように30センチほどの作品もある。