(CNN) 米国はこのほど、盗難に遭っていたコロンブスによる15世紀の書簡をイタリアに返還した。米移民・関税執行局(ICE)が19日に発表した。
ラテン語で書かれたこの書物はコロンブスの書簡を収めた初版本で、現存する30部のうちの1冊。コロンブスはこの中で、1493年にアメリカ大陸で発見した内容をスペイン王フェルナンドと女王イサベルに発表している。両者はコロンブスによる新世界への航海に資金を提供した。
この書物は、伊ベネチアの国立マルチャーナ図書館から1980年代に盗まれたものだとみられている。米国の個人収集家のコレクションから見つかった。
2020年の発見の際、ICEとデラウェア州連邦地検はこの収集家に書簡が渡った経緯について、疑いを持つことなくある希少本の販売業者から03年に入手したと説明した。
書簡がどのように盗み出され、その販売業者の下にたどり着いたのか、当局は詳細を明らかにしていない。
書簡の写しは極めて珍しく、その価値の高さは収集家、歴史家によって認められている。
今週イタリアに返還された版は、「プランクI版」として知られる。名称は有力な印刷業者だったシュテファン・プランクにちなむ。プランクは500年以上前、書簡の2種類の版を刊行した。
伊ベネチアの国立マルチャーナ図書館に所蔵されていた書簡は、1980年代に行方が分からなくなっていた/U.S. Immigration and Customs Enforcement
今回の書簡が回収された20年、米検察はその価値を130万ドル(現在のレートで約1億8400万円)以上と発表した。
ICEの副長官は声明で「これは過去数十年で盗まれた書簡のオリジナル版で4つ目に当たる。返還できてこれ以上の喜びはない」と述べた。
盗まれた他の写しの中には、米当局が ローマ教皇庁 (バチカン)の図書館へ18年に返還したものも含まれる。別の写しはスペインのカタルーニャ図書館に返還された。
16年には、伊フィレンツェの図書館から持ち去られ、その後米国の議会図書館に寄贈されていた8ページの写しも返還している。
書簡のイタリアへの返還は米国による広範な取り組みの一部で、盗難に遭った品目を本国に送り届けることを目的としている。
ICEによると、07年以降同局は2万点を超える品目を40以上の国と機関に返還した。そこにはナチスに略奪された美術品、古代エジプトの棺(ひつぎ)、フランスの絵画、イタリアの彫刻、モンゴルと中国の恐竜化石、さらに人骨も含まれる。