(CNN) スペイン警察はこのほど、正体不明のストリートアーティスト、バンクシーの作品を偽造して販売していたとされる犯罪組織を封じ込めた。偽造された作品は欧米各地で、1点最大1500ユーロ(約24万円)で売られていたという。
カタルーニャ警察によると、捜査員らは北部サラゴサの住宅を強制捜索し、作品9点を押収した。同住宅から活動していた組織は約25件の販売に関与。販売はネット上のサイトやオークション会場、骨董(こっとう)品店を通じ行われ、バンクシーのものとされる作品が対象だった。警察が声明で7日に明らかにした。
カタルーニャ警察の歴史遺産担当の捜査員らは、スペイン、ドイツ、スイス、米国、英国で被害者を特定。これらの被害者は当該の作品を、バンクシーの「ディズマランド」計画の一部と信じて購入していた。
押収された作品は、段ボール上にスプレーとステンシルを使用して描かれていた。またシールやステッカーを加えることで、本物らしく見せようとしている。
警察は、詐欺と知的財産権の侵害で4人を訴追したと発表。詐欺罪に問われた2人は「金銭上の問題」に見舞われており、バンクシー作品の複製を作って「80ユーロを超えない適正価格」で販売したという。一方「主犯」はアート業界を熟知した人物で、偽造した証明書を使い、偽物を本物に見せかけて売っていたとされる。
捜査員らが明らかにしたところによれば、バンクシー作品の真贋(しんがん)を判定し、認証する権限を与えられた唯一の機関「ペストコントロール」が、サラゴサの作業場に絡む作品を偽物だと確認した。付随する証明書も偽造したものだと断じた。
警察は同様の偽物が数多く市場に出回っている現状を認識。疑念を抱いていると、声明は付け加えた。
バンクシーはグラフィティ・アーティストとしての活動を英ブリストルで1990年代に開始。その後アート業界で最も需要の大きいアーティストの一人になった。これには本人の反体制的な発言やブラックユーモアが一役買っている。2015年には、英国の海辺の街に期間限定でオープンしたテーマパーク、「ディズマランド」を手掛けた。これはディズニーランドのパロディーで「ビミューズメント(困惑・当惑)パーク」と銘打たれた施設。老朽化したおとぎの城や、移民を満載した船の模型を来園者が操作して暗い水の上を進めるゲームなどがアトラクションとして盛り込まれていた。お小遣いの前払いを求める子どもたちに高金利で金を貸す店などもあった。
近年、バンクシー作品の市場価値は高騰している(落札直後にシュレッダーにかけられたことで話題を集めた「愛はごみ箱の中に」は、21年にサザビーのオークションにかけられ、過去最高額となる2540万ドルで落札された)。しかし本人は公共の場での制作を続けているため作品の保護は不可能に近く、窃盗や汚損も誘発することになる。
作品の偽造に関する捜査は継続中。警察は、今後新たな被害者や逮捕者が出る可能性を排除していないと述べた。