ロンドン(CNN) 動物の権利擁護を訴える団体に所属する複数の活動家が、英チャールズ国王を描いた最初の公式肖像画に対する汚損行為を働いたことが分かった。肖像画はロンドンのギャラリーに展示されていた。
活動団体アニマル・ライジングは11日、自分たちのソーシャルメディアのチャンネルに動画を投稿。そこでは2人の活動家がペイントローラーを使って国王の肖像画の上にメッセージを貼り付ける様子が映っている。
肖像画は一般公開中だった。ロンドン中心部のフィリップ・モールド・ギャラリーで今月21日まで展示されている。
即位後のチャールズ国王を描いた最初の公式肖像画となるこの作品は、今年お披露目された際に世間を驚かせていた。肖像画を手掛けたのは画家のジョナサン・ヨー氏だが、国王の背景を絵筆の跡の残る深紅色の絵の具で塗りつぶしたその作風には賛否の声が沸き上がった。
活動家らは肖像画の国王の頭部を、英国のアニメ作品「ウォレスとグルミット」に登場するキャラクター「ウォレス」のイラストで隠した。同様に貼り付けた漫画の吹き出しには、「チーズはないよ、グルミット。RSPCAの農場で起きている虐待を見てみろ」と書かれている。
こうした行動には、アニマル・ライジングが9日に公表した新たな報告への注目を集める狙いがあったとみられる。同団体は、英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)が家畜の福祉の基準を保証している45の農場を調査した。これらの保証を受けた農場では、動物たちにより広い活動スペースが与えられ、檻(おり)の中では飼育されないことになっている。これらの農場が生産する食肉、魚肉、乳製品にはRSPCAの認証マークが付与される。アニマル・ライジングは今回の調査で「不都合な」結果が出たと指摘。視察した全ての農場で「深刻な動物虐待」が行われていることが明らかになったと主張した。
チャールズ国王は先月、RSPCAのパトロンとなっていた。英紙テレグラフに寄せた声明で、アニマル・ライジングは以下のように説明している。「チャールズ国王は『ウォレスとグルミット』の大ファンなので、本人の注意を引くのにこれ以上の方法は考えられなかった。身の毛もよだつシーンがRSPCAの認証を受けた農場で繰り広げられている! 我々は今回の行動で国王陛下を楽しませたいと願いつつ、同時に真剣な再考も求めたい。 RSPCAが支持する各農場での恐ろしい惨事に関りを持ちたいと思うのかどうか、本気で考えてほしい」
(2012年、英王室の邸宅クラレンス・ハウスで、故エリザベス女王の即位60周年記念式典に関連する場に参加したカミラ王妃は、チャールズ国王の子どもたちに向かって、「ウォレスとグルミット」が国王の好きな作品だと示唆していた)
英アニメ作品「ウォレスとグルミット」に因んだイラストと台詞が貼り付けられた英チャールズ国王の肖像画/Animal Rights/Twitter
アニマル・ライジングは自分たちを非暴力の組織と説明。「持続可能かつ真に植物ベースの食品体系への急速な転換」を求めて活動中だとしている。またRSPCAの認証システムについても、「産業規模での動物虐待」を隠蔽(いんぺい)するものだとして、廃止を訴えている。
RSPCAはアニマル・ライジングの主張に対して、CNNに寄せた11日の声明でこう返答した。「RSPCAが認証した農場での福祉に関するあらゆる懸念を極めて深刻に受け止める。認証組織は現在、これらの告発の検証を迅速に進めている」
「我々の農場活動に関するアニマル・ライジングの異議申し立てには公に、透明性のある形で既に回答している」「アニマル・ライジングも我々と同様、動物にとって最もよい状況を求めていると理解するが、彼らの活動は目的にそぐわず、我々全員による取り組みに対する挑戦に他ならない。我々は全ての動物にとってより良い世界を作ることを念頭に置いている」と、声明は続けた。
肖像画への汚損行為については、「衝撃を受けた」ともRSPCAは述べた。「我々の取り組みへの精査は喜んで受け入れるが、どんな種類の違法行為も許すことはできない」
肖像画を展示するギャラリーのオーナー、フィリップ・モールド氏によると、肖像画自体はアクリル樹脂で保護されているため、「いかなる破損」も被っていない。同氏はCNNの取材に答え、活動家らが使用した粘着シールが肖像画に貼りついていた時間は「10秒に満たなかった」と説明した。
活動家らはギャラリーからの退出を求められ、それに従ったという。この件について警察に被害届を出したと、モールド氏は付け加えた。
現時点で肖像画の展示を中止する予定はないが、事件を受けギャラリーのスタッフは引き続き「警戒態勢を敷く」と同氏は述べた。