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英王室写真家が語る、ダイアナ元妃の象徴的な写真に隠された真実

英国の故ダイアナ元妃

英国の故ダイアナ元妃/Anwar Hussein

ロンドン(CNN) ダイアナ元妃の特に記憶に残る写真数点が英ロンドンで開催中の新たな展示会に出展されている。例えば王室の慣習を打ち破った「リベンジドレス」の写真や、世界がエイズ患者に対する接し方を変えた、元妃のエイズ患者との握手を捉えた写真などだ。

ロンドンのタワーブリッジのすぐ北にあるドックサイド・ボールツで5月25日から9月2日まで開催されているこの展示会は、人道主義者、母親、ファッションアイコンとしてのダイアナ元妃の人生をたどる。この展示会には、有名な王室写真家アンワル・フセイン氏(85)が丁寧に厳選した作品が展示されている。同氏は元妃が19歳のときに写真を撮り始めた。

展示会の開催に先立ちアンワル氏はCNNに「最初は『王室の写真は撮らない方がいい』と言う人もいた」と語った。「私は『なぜダメなんだ? 変化がほしい』と反論した。私はボブ・マーリー、エルトン・ジョン、ビートルズなどロックンロールの写真を撮ってきて、ショービジネスに飽き飽きしていた」

CNNはドックサイド・ボールツの地下に張りめぐらされたトンネルをくぐり抜け、アンワル氏の2人の息子、サミールさん(45)とザックさん(43)に展示会を案内してもらった。父親にならい王室写真家になった2人は、王室の若い世代の写真を撮影して話題になっている。

サミールさんは床から天井まである「リベンジドレス」の写真を背に、「ダイアナは風潮、特に王室に逆らった。彼女はとてもたくさんのことを変えた。ケイト(キャサリン妃)やメーガンが着ているものなど、今では普通とみなされているものすべてを変えたのはダイアナだった」と語った。リベンジドレスはチャールズ皇太子(当時)が不倫を公に認めた当日に開かれたバニティフェア誌のパーティーで撮影された有名なドレスだ。

バニティフェア誌のパーティーに出席した故ダイアナ妃=1994年11月/Anwar Hussein
バニティフェア誌のパーティーに出席した故ダイアナ妃=1994年11月/Anwar Hussein

ザックさんは「彼女が現われるとは思っていなかった人が多かったが、姿を見せた彼女は魅力的で『私は隠れるつもりはない、私は自分自身であり続ける』という本当に大きな意思表示になった」と言い添えた。

アンワル氏にとってはまったく別の写真が印象深いという。「これはダイアナのお気に入りだった」。アンワル氏はそう語り、1996年にパキスタンのラホールの病院を訪れた際、幼いがん患者を抱きしめるダイアナ元妃の写真を見上げた。

「この少年は目が見えなかった。少年からは(治療に)使用されていたあらゆる化学物質のにおいがしたが、彼女は気にせず抱きしめた」「その後、少年は亡くなり、ダイアナは悲しみに暮れた。彼女の人道的な一面が表れている」

病院訪問中に子どもをなぐさめるダイアナ元妃=1996年4月、パキスタン・ラホール/Anwar Hussein
病院訪問中に子どもをなぐさめるダイアナ元妃=1996年4月、パキスタン・ラホール/Anwar Hussein

長年にわたりアンワル氏と息子たちが王室の写真を何十万枚と撮影してきた中で、展示されている写真を要約する言葉が一つある。それは「遺産」だ。

アンワル氏は「(この展示会が)物議を醸すものになることは望んでいなかった。ダイアナの生涯と彼女から受け継いだものをたたえる場にしたかった」と語った。「『ザ・クラウン』やダイアナを題材にした映画などがあり、まったく新しい世代がそれを体験しているように感じる」

サミールさんとザックさんの人生には父親も深く影響を及ぼしている。それは展示会の別の場所に飾られている、ほとんど同じだが不気味なほど異なる2枚の写真からも見て取れる。

92年に撮影された最初の写真では、ダイアナ元妃がインドのタージマハルの前に一人座っている。キャサリン・ウォーカーがデザインした赤と紫のスーツは、柔らかな象牙色をした大理石の霊廟(れいびょう)を背に鮮やかな色彩を放っている。

父の思い出を振り返りながら話してくれたザックさんによると、アンワル氏はタージマハル訪問当日、チャールズ皇太子には他の用事があるためダイアナ元妃は一人で向かったと聞かされたという。「彼女は結局、愛の記念碑の前でポーズを取った」「その後すぐに2人は別居を発表した」

タージマハルを訪れたダイアナ元妃=1992年2月11日、インド/Anwar Hussein
タージマハルを訪れたダイアナ元妃=1992年2月11日、インド/Anwar Hussein

約24年後、ザックさんはウィリアム王子と妻のキャサリン妃を撮影するため同じ場所を訪れた。ザックさんは「多くの臆測があった。2人はダイアナの写真を再現するのかと」と語った。「彼らはベンチのところに来て座ったが、今回はとても愛し合っている2人だ」

多くの点で、この展示会は二つの家族に向けたラブレターだ。レンズの後ろにはフセイン家、レンズの前には数世代にわたる王室がいる。サミールさんは「(私たちの父は)これまで今回のようなことをしたことは一度もない」と話す。「父は年を重ね、いい年になったため、自分が成し遂げたことと、人としての彼女をたたえるということを本当にやりたかったのだと思う」

アンワル氏は声明で「撮影した写真や息子たちの写真がロンドンに戻り、このような素晴らしい女性とその息子たちをたたえ、記念できることをうれしく思う」と述べた。

展示会の入場料は17ポンド(約3400円)から。写真の背景を詳しく説明する60分間の音声ツアーも含まれる。

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