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SNSで盛り上がりを見せる「天然のボトックス」、その効果は?

ダニエラ・マルティネスさんは日常のスキンケアに亜麻仁を取り入れ始めた

ダニエラ・マルティネスさんは日常のスキンケアに亜麻仁を取り入れ始めた/Photo Illustration by Jason Lancaster/CNN/Daniela Martinez

(CNN) キルティ・テワニさんはTikTok(ティックトック)に投稿した動画で「ボトックスは必要ない、本当に!」と宣言した。テワニさんのフォロワーは47万5400人を超える。この後にはエンパワーメント(力を高めること)や自己受容の言葉が続くと予想したかもしれないが、インドの伝統医学アーユルベーダのセラピストでメイクアップアーティストのテワニさんはバナナの皮の内側を顔にこすりつけ始めた。

バナナの皮は「シワを減らす効果がある」とテワニさん。皮にはルテインが含まれており、「肌を明るくし、潤いを与え、整える」抗酸化作用があると説明した。バナナを選ぶときは「熟しているほど良い」という。この動画は220万回以上再生され、6万1200件あまりの「いいね!」がつけられている。

ニューヨークを拠点とするテワニさんはCNNの電話取材に対し、自身はバナナの味が嫌いだが、子どもたちは好きでよく食べると語った。「バナナに関する本を読んでいて、カリウムが豊富で皮の内側にたくさんの栄養素が含まれていることを知った。肌に潤いを与えるのに役立つのではないかと考えた」という。

テワニさんは「ネットで調べてみると、すでに何人かの人がやっていたので、子どもたちがバナナを食べるたびに自分の顔で試し始めた」と語った。1カ月後、日々のスキンケアをあまり変えていないのに、ほうれい線が少しふっくらしたことに気づき、とても驚いたと話す。

キルティ・テワニさんはバナナの味が嫌いだがバナナの皮は顔のスキンケアに効果があると考えている/Courtesy Kirti Tewani
キルティ・テワニさんはバナナの味が嫌いだがバナナの皮は顔のスキンケアに効果があると考えている/Courtesy Kirti Tewani

肌の見た目を改善する、ボトックスに代わる方法を見つけたのはテワニさんだけではない。他の多くの美容マニアも最近、肌を保湿し、ニキビを減らす方法として、ヨーグルトや亜麻仁、さらには牛脂など、食品売り場で普通に見かける食品の成分を活用している。それらの成分は摂取するのではなく、顔に直接すりこむのだ。このトレンドはSNSで「nature’s Botox(天然のボトックス)」ともてはやされている。

自分でできる美容アイデアが人気に

これは、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって火が付いたスキンケアブームに続く驚くべき展開だ。このブームによって人々は、ラ・メールなどの高級ブランドの科学的に裏付けされた基礎化粧品に多額のお金をつぎ込み、セフォラなどの美容専門店には、グロウ・レシピなど話題のスキンケアブランドを買い求める10歳前後の少女たちが殺到した。

このトレンドは今後も勢いを増すと見込まれている。TikTokの広報担当者はCNNに対し、2月時点で同プラットフォームにはハッシュタグ「#NaturesBotox」が付けられた動画が5000本以上あり、その大多数は過去2カ月の間にシェアされたと語る。このトレンドがあまりにも広まっていることから、米などの一般的な食品が美容ブランドの製品の主力原料になりつつある。

市場調査会社ミンテルの美容およびパーソナルケア担当主席アナリスト、クレア・ヘニガンさんは、この変化について、プロの美容サービスよりもセルフケアへの関心が高まっていることを示しているとみる。その一因は費用だ。ミンテルの2024年のデータによると、米国の12~17歳の77%が美容やスキンケアの新しいトレンドを試すのが楽しいと答える一方で、33%は高すぎるという理由で保護者に欲しいものを買ってもらえなかったと答えている。

ドーチーさんは今年のグラミー賞授賞式で、顔にテープを貼ってパフォーマンスを行った/Kevin Mazur/Getty Images
ドーチーさんは今年のグラミー賞授賞式で、顔にテープを貼ってパフォーマンスを行った/Kevin Mazur/Getty Images

ヘニガンさんによると、このトレンドを後押ししている大きな要因はSNSだ。セルフケアによる代替品には、コミュニティーが主導して発見する楽しみがあるという。

他の人たちにとっては、金銭的なことは関係なく、単に「健康や安全上のリスクが低いと認識されている」とヘニガンさんは指摘。注目を集める別のセルフ美容として、顔に特殊な粘着テープを貼って肌を引き締める非侵襲的な手法であるフェイシャルテーピングを挙げた。こうした手法は、もはや自宅で誰にも見られることなく行う日常的なケアに限られるものではない。ドーチーさんは最優秀ラップアルバム賞を受賞した今年のグラミー賞授賞式で、顔にテープを貼ってパフォーマンスを行った。

母親が一番よく知っている

フロリダ州ウェストパームビーチを拠点とするコピーライターのダニエラ・マルティネスさんは、美容専門家で自然療法が大好きな母親のもとで育ったと話す。そのことが肌の保湿と質感を改善する「シンプルで自然な方法」を探すきっかけとなり、現在では1万3300人のTikTokフォロワーにその過程を共有している。

マルティネスさんは母親の影響もあり、肌の保湿と質感を改善する「シンプルで自然な方法」をよく試している/Daniela Martinez
マルティネスさんは母親の影響もあり、肌の保湿と質感を改善する「シンプルで自然な方法」をよく試している/Daniela Martinez

マルティネスさんは、若い女性が亜麻仁の効能をほめていた動画を見て、日常のスキンケアに亜麻仁を取り入れ始めた。週に1、2回、亜麻仁を煮込んでから濾(こ)して顔に塗り、30分ほど置いてから洗い流すのだという。

マルティネスさんは、「(亜麻仁)マスクの引き締め効果はまったく驚異的」で、「肌は輝きを増し、より柔らかく滑らかになった」と感動したと語った。

腸には良いものは顔にも良いのか?

一方で、一部の皮膚専門家はこうした話に懐疑的で、多くの自然由来のセルフスキンケアについて有効性と長期的な利点は実証されていないと警鐘を鳴らす。

米国在住の皮膚科医、ムニーブ・シャーさんはCNNに、亜麻仁は食物繊維が豊富で消化に良いため、人々は良い食べ物なら顔にも良いだろうと考えるのだと話す。一方で、亜麻仁や牛脂などの食品が優れた保湿クリームであるという科学的証拠は弱いと指摘した。

ボトックスは認知度が高いため、美容用語として過剰に使用されている。シャーさんは「ボトックスみたいだと人々が騒ぐ新しいトレンドを数カ月おきにネット上で目にするが、多くの場合、証明されていない。ボトックスはよく知られている製品であり、人々はそれをよりどころのように使いたがるのだと思う」と語った。現在、スキンケア製品によく見られる化合物であるレチノールやヘキサペプチドを除けば、ボトックスに近い効果が得られる外用製品は実際のところ存在しないという。

英国在住のエステティシャン、ディジャ・アヨデレさんは、自分で行う自然療法には危険が潜むと考えている。果物には程度の差こそあれ、酸が含まれており、肌の敏感さによっては化学やけどなどの問題を引き起こす可能性があるからだ。「肌の黒ずみを薄くするためにレモンを使っているにもかかわらず、日焼け止めを使わないと、光過敏症になる危険がある。SNS上のすべてのことに関しては、多くの人が大丈夫でも、他の人よりも肌の弱い人がいるのは当然のことで、その人たちは多くの問題を抱えることになる」

グレース・メイさんは最近、牛脂フェイシャルを試した/Grace May
グレース・メイさんは最近、牛脂フェイシャルを試した/Grace May

ロサンゼルス在住のコンテンツクリエーター、グレース・メイさんも同様の結論に達した。肌をもっときれいにしたいという思いから、メイさんは最近、牛脂フェイシャルを試したが、期待したような結果は得られなかった。牛脂を塗った夜は、いつもの保湿クリームは使わなかったという。メイさんは「初めて試したときは、本当にべたべたした感じだった」といい、最終的には使うのをやめてしまった。牛脂が毛穴に詰まってしまい、にきびがひどくなったからだという。

原文タイトル:The internet is raving about ‘nature’s Botox.’ Does it work?(抄訳)

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