Design

艾未未氏、65万個のレゴブロックでモネの「睡蓮」を再現

艾未未氏の「睡蓮#1」

艾未未氏の「睡蓮#1」/Ela Bialkowska/OKNO studio

4月に英ロンドンのデザインミュージアムで開幕した中国人の芸術家、艾未未(アイウェイウェイ)氏の個展の来場者は、見覚えのある光景を目にすることになる。それはフランスの画家クロード・モネの有名な絵画「睡蓮(すいれん)」だ。しかし、この作品はモネの印象派の筆遣いをまねて描かれたのではなく、22色、65万個のレゴブロックを組み合わせて「睡蓮」を再現した巨大な作品だ。

デザインミュージアムによると、「睡蓮#1」と題されたこの作品は、幅が15メートル以上あり、艾氏がこれまでに制作した中で最大級のレゴアートだという。

艾未未氏/Rick Pushinsky
艾未未氏/Rick Pushinsky

艾氏の「睡蓮#1」にもモネの故郷であるフランス・ジベルニーののどかな睡蓮の池が描かれているが、一方で、作品の右端に「暗い入口」のようなものも描かれている。これは、艾氏が中国の新疆ウイグル自治区で過ごした幼少期を示している。デザインミュージアムのプレスリリースによると、暗い色のレゴブロックで描かれた部分は、1960年代に艾氏が父と亡命生活を送っていた地下壕(ごう)への扉を表しているという。

艾氏は声明の中で「『睡蓮#1』では、東洋の禅宗を彷彿(ほうふつ)させるモネの印象派の絵画と、父と私の実体験をデジタル化、ピクセル化された言語に組み込んでいる」と述べ、さらに次のように続けた。「素材としてのおもちゃのブロックは、硬くて頑丈だが、分解してばらばらになりうるという特性があり、人間の意識が絶えず分裂している、この急速に発展する時代の言語の特性を反映している」

「睡蓮#1」はたくさんのレゴブロックでできている/Ela Bialkowska/OKNO studio
「睡蓮#1」はたくさんのレゴブロックでできている/Ela Bialkowska/OKNO studio

艾氏は、陶器、木材、磁器から映画、写真、ファウンドオブジェクトに至るまで、さまざまな素材を自身のインスタレーションやコンセプチュアルアートに使用してきた。そして2000年代後半に、レゴブロックをレパートリーに加えた。

細密で色鮮やかなこれらの作品の中には、艾氏が14年の展覧会のために制作した、政治犯や亡命者たちの肖像画数百点も含まれている。その翌年、艾氏のスタジオがレゴ社に新たなプロジェクトで使用するレゴブロックを大量発注したところ、レゴ社が販売を拒否したことが大きく報じられた。艾氏はレゴ社の対応を「検閲」と表現した(レゴ社は後に販売拒否の決定を覆した)。

このレゴの対応をめぐる論争が続く中、艾氏のファンや一般の人々が、所有するレゴブロックを艾氏に寄贈した。この寄贈されたレゴブロックもロンドンで開催される個展で、「無題(レゴ事件)」と題されたインスタレーションとして展示される。

作品は幅が15メートル以上あり、ギャラリーの壁全体に広がっている/Ela Bialkowska/OKNO studio
作品は幅が15メートル以上あり、ギャラリーの壁全体に広がっている/Ela Bialkowska/OKNO studio

「Ai Weiwei:Making Sense」と題されたこの個展には、壮大なスケールで制作された他のインスタレーションも展示される。例えば、宋朝時代の磁器の急須(きゅうす)の注ぎ口を20万個集めた作品や、18年に北京市内の艾氏のスタジオが市当局によって取り壊された際に破壊された艾氏の彫刻の破片を数千個集めた作品などだ。

艾氏のインスタレーションのスケール(の大きさ)は「人々を動揺させるのと同時に感動させる」と語るのは、デザインミュージアムのチーフキュレーターを務めるジャスティン・マクガーク氏だ。「訪問者は、これらの作品を理解しようとする中で、我々が何を大切にし、何を破壊するかについて考えさせられる」

マクガーク氏は「睡蓮#1」について、「(艾氏は)一方で砂漠にある幼少期の家のドアを挿入することにより作品を個人化し、他方でモジュール式のレゴブロックの産業言語を使用することにより作品を非個人化している。これは巨大、複雑かつ力強い作品であり、この作品を展示する最初の美術館であることを誇りに思う」と述べた。

艾氏の個展「Ai Weiwei: Making Sense」はロンドンのデザインミュージアムで4月7日から7月30日まで開催。

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