グッチ、イヴ・サンローラン、アレキサンダー・マックイーン、バレンシアガといったブランドを擁する高級ファッションのコングロマリット(複合企業)、ケリングは、全ブランドで動物の毛皮の使用を2022年秋までに禁止する。
「今やその時が来た」。ケリングの最高経営責任者(CEO)兼会長、フランソワアンリ・ピノー氏は24日に出した短い声明の中でそう述べた。「世界は変わった。我々のクライアントとともに。ラグジュアリーも当然それに順応する必要がある」
「動物の福祉に関していえば、我がグループは常に従来の慣行を改善する意欲を示してきた。自社のサプライチェーン(供給網)やラグジュアリー部門全体においてだ」(ピノー氏)
グッチは2017年、ケリングの保有するブランドで初めて、デザインからの毛皮の排除を約束。社会的責任をブランドの中核的価値の一つに掲げた。バレンシアガ、アレキサンダー・マックイーン、ボッテガ・ヴェネタといった他のブランドも、すでに毛皮の不使用へと動いている。
2021年3月、パリにあるイヴ・サンローランの店舗前で毛皮の使用停止をブランドに訴える動物保護団体の活動家ら/Alain Jocard/AFP/Getty
こうした流れに次ぐ今回の一歩は、企業全体で毛皮製品を明確に廃止するという内容だ。わずか2年前、ケリングは動物の福祉に関する一連の基準を発表していた。そこで目指したのは「グループのサプライチェーンを通じて動物に対する人道的な扱いを実証すること」で、「蓄牛、子牛、ヒツジ、ヤギの全生涯にわたる扱い」に関して複数の要項が盛り込まれた。ケリングによれば、19年にまとめられたあらゆる要項は、引き続き他の「動物繊維や動物素材」を使用する場合にも適用される。
各ブランドに向けては、動物への残酷行為に対する取り組みを強化するよう求める圧力がこの数年で高まっている。今月、ニューヨークで開催されたファッションの祭典「МETガラ」の共同ホストを務めたビリー・アイリッシュは米ブランド、オスカー・デ・ラ・レンタに対し、毛皮の使用廃止を約束するよう交渉。自身が同ブランドの衣装をまとってレッドカーペットを歩く条件とした。
アイリッシュはインスタグラムで「ものすごく感激している。(オスカー・デ・ラ・レンタの)チーム全員がこの問題で自分の声に耳を傾け、変化を起こしてくれた。影響はとても大きな意味を持つ。動物たちだけでなく、私たちの地球や環境にとっても」と述べた。
「すべてのデザイナーが同じ行動に出るのを強く求める」(アイリッシュ)
シャネルとプラダも18年と19年に、それぞれ毛皮の使用を停止すると発表している。