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セレブの間で人気の赤毛 その意外な歴史をひも解く

英歌手のデュア・リパも今年秋、チェリーレッドの髪を披露した

英歌手のデュア・リパも今年秋、チェリーレッドの髪を披露した/Neil Mockford/GC Images/Getty Images

(CNN) セレブの頭を見るだけで、次に流行(はや)る色が分かることがある。

米人気歌手ビリー・アイリッシュは今年8月、彼女の象徴とも言えるヘアスタイルを復活させた。全体は光沢のあるブラックで、根元だけ印象的な色に染めているが、今回の色はチェリーレッドだ。

その1カ月後、米女優ミーガン・フォックスも燃えるような緋色(ひいろ)の髪を披露した。彼女のスタイリストはその髪を「ベルベット・ボブ」と名付けた。

そして、ちょうど木の葉が色づき始める頃、英国の女性シンガーソングライター、デュア・リパの髪も赤く染まった。デュアは10月にマホガニーレッドに染めた髪を披露した。今、最もトレンディーな色が何色か確信を持てない人もいるだろうが、デュアは髪を赤く染め、バーガンディやマルーン色の服やアクセサリーとの調和を図った。

また米国のモデル・女優のケンダル・ジェンナーも今月、ファッション誌「ヴォーグ」のインタビューでこれまでの自身のルックスを振り返った際、2022年に注目を集めたカッパーレッドの髪を懐かしんだ。髪の色を再びブルネットに戻したジェンナーは、「みんな、私、赤い髪が恋しいわ」と述べ、さらに「どうしたらいいかしら。(髪の色を)元に戻すのが早すぎたわ」と嘆いた。

ミーガン・フォックスは髪を真っ赤なボブにした姿が目撃された/MediaPunch/Shutterstock
ミーガン・フォックスは髪を真っ赤なボブにした姿が目撃された/MediaPunch/Shutterstock

2023年秋冬のランウェーでは、バーバリー、ロダルテ、グッチ、ミッソーニなどのショーで、チェリーコークやストロベリーブロンドの髪が目立った。

また9月には、ヴェルサーチェ、ディーゼルからミュウミュウ、ルイ・ヴィトンに至るまで、さらに多くのデザイナーたちが、このトレンドに乗って赤毛のモデルを多く起用した。

天然の赤毛が特徴的なモデルのリアン・ヴァン・ロンパエイは、ザ・ロウ、パコ・ラバンヌのオープニングや、シャネルのクロージングなど、今季開催された最大規模のファッションショーのうち八つのショーに出演した。

しかし、この燃えるような赤毛の魅力は決して新時代のトレンドというわけではない。実際、赤毛には驚くほど広範な歴史がある。

世界で生まれつき赤毛の人の割合はわずか2%弱にすぎないが、赤毛は数百年にわたって恐れられ、崇拝されてきた。

魔女裁判が行われていた15世紀の欧州では、赤毛は「悪魔の印」と考えられ、赤毛を理由に殺されることもあった。

17世紀に英国の学者オバディア・ウォーカーは、当時広く行きわたっていた赤毛の男性を「中傷する」文化に反対する嘆願書を書いた。

ウォーカーは「人は、自分と同じ人間(の名誉)を傷付ける」と述べ、さらに次のように続けた。「そして、これはほんのささいな理由でなされる場合が多い(中略)例えば、生まれつき髪の色を理由にその人を軽蔑する」

ビリー・アイリッシュも髪を緋色に染めた大物の一人だ
ビリー・アイリッシュも髪を緋色に染めた大物の一人だ

髪の歴史を研究する歴史家レイチェル・ギブソン氏は、これまで赤毛は常に「異物」と考えられてきたと指摘する。

ギブソン氏は電話インタビューで、「聖書で、(イエスを裏切った)ユダは赤毛とされている。またイングランドを攻撃・侵略した古代のガリア人やスコット人も赤毛が多かった」とした上で、「よって、はるか昔から赤毛は侵略者の象徴だった」と付け加えた。

しかし、中には赤毛の特異性に大きな希少価値を見いだす人もいた。

16世紀のイングランド女王エリザベス1世の在位中の髪は赤毛のカールだったが、生まれつき赤毛だったわけではなく、あえて赤毛を選択した。

「Red: A Natural History of the Redhead(邦題:赤毛の文化史 : マグダラのマリア、赤毛のアンからカンバーバッチまで)」の著者ジャッキー・コリス・ハーヴィー氏によると、エリザベス1世は生涯の大半にわたり、かつらを着用していたという。おそらくどんな色でも選べたはずだが、彼女は燃えるようなオーバーン(赤褐色)を選び、髪の色に合わせて自分の馬の毛まで赤く染めたとされている。

歴史家のギブソン氏は「エリザベス1世の在位中は赤毛が流行していた」とし、「宮廷の侍従や侍女たちも、女王への忠誠心を示すために髪を赤く染めていた」と付け加えた。

1558年から1603年までイングランドを統治したエリザベス女王はオーバーン(赤褐色)の髪で知られる。特別に選んだかつらだったとの見方もある/Print Collector/Getty Images
1558年から1603年までイングランドを統治したエリザベス女王はオーバーン(赤褐色)の髪で知られる。特別に選んだかつらだったとの見方もある/Print Collector/Getty Images

緋色(ひいろ)の髪は、歴史を通して、流行り廃りを繰り返してきた。

1800年代半ばから終わりにかけて、ガブリエル・ロセッティなど、ラファエル前派の画家たちは、ほぼ例外なく赤毛の美女を描いていた。

また1923年には、あるファッションジャーナリストが、赤毛がパリを席巻したと記した。今から100年前にガーディアン紙に掲載されたファッション記事には「(パリでは)生まれつき赤毛でない人は皆、髪を赤く染めている」とあり、さらに「パリの場合、自然な色では見向きもされない」と書かれている。

1988年にも、当時、米紙ニューヨーク・タイムズの記者だったリンダ・ウェルズ氏が「(赤は)今、最も魅力的な髪の色」だとし、「今、赤毛がどんなにおしゃれでも、今後赤毛が陳腐化することは決してない」と述べている。

ガブリエル・ロセッティは赤毛の女性を頻繁に描いた/Heritage Images/Getty Images
ガブリエル・ロセッティは赤毛の女性を頻繁に描いた/Heritage Images/Getty Images

現代でも、注目を浴びているという感覚こそが髪の色を選ぶ際の主な動機になっている。

セレブ専門のヘアスタイリスト、ジェナ・パリー氏はCNN Style宛てのメールの中で「初めて赤毛を試したいと考える人々は、何か刺激的なことをしたがっている」と述べた。

パリー氏は昨年、ケンダル・ジェンナーにとって重大な分岐点となった「スモークパプリカ」色の髪を生み出した。また米女優・モデルのエミリー・ラタコウスキーと女優モード・アパトーが髪を赤く染めるきっかけを作った仕掛け人でもある。

「彼女たちは(髪の色で)自信を表現し、人ごみの中で目立ちたいと考えている」(パリー氏)

シカゴに拠点を置くヘアスタイリスト、ニコール・キーナン氏は、赤毛は自分の顧客にとって経済的なメリットがあると語る。キーナン氏は電話インタビューの中で、「(赤毛は)ブロンドに比べてコスト的に選びやすいのは間違いない」とし、「特に髪のメラニン色素が濃い人は、ブロンドの維持に高額のコストがかかる」と付け加えた。

デュア・リパとミーガン・フォックスの2人に関して言えば、彼女たちが髪の色を劇的に変えた時期と、新プロジェクトが発表された時期がちょうど重なったのは果たして偶然だろうか(11月7日にフォックスの詩集「Pretty Boys Are Poisonous: Poems」が発売され、同9日にリパの最新シングル「Houdini/フーディーニ」がリリースされた)。

デュア・リパが赤い髪を披露したタイミングは、新曲の発表と巧みに重なっていた/MEGA/GC Images/GettyImages
デュア・リパが赤い髪を披露したタイミングは、新曲の発表と巧みに重なっていた/MEGA/GC Images/GettyImages

この点について歴史家のギブソン氏は「髪は目で見えるものなので、髪の色が変われば瞬時にわかる。赤は人目を引くという点では、不変の魅力がある」と述べ、さらに「アルバムのリリース時は髪(の色)を変える良いタイミングといえる」と付け加えた。

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