（ＣＮＮ） 「ネイキッドドレス」は間違いなく、２０２４年のレッドカーペットにおける最大のトレンドであり、アカデミー賞、メットガラなどあらゆるイベントを席巻した。エル・ファニングからキム・カーダシアン、ドージャ・キャットからシャーリーズ・セロンまで、幅広いセレブが愛用するネイキッドドレスは、レッドカーペットで人々の目をくぎ付けにする定番となっている。昨年のバニティ・フェア誌主催のアカデミー賞授賞式後のアフターパーティーでは、裸が天使のようにも（ジェニファー・ローレンスが着用した透け感のあるハイウエストのドレスはジバンシィの１９９６年秋冬コレクションのもので、クローバーの刺しゅうが手縫いで施されていた）、きわどいもの（例えばチャーリー・ＸＣＸの乳首が透けた薄黄色のドレスもジバンシィだった）にもなりえることが分かった。
しかし、今月２日のグラミー賞授賞式で注目を集めたネイキッドドレスはたった１着だけだった。米カリフォルニア州ロサンゼルスで起きた壊滅的な山火事の犠牲者を悼み、ほとんどの参加者が落ち着いた色合いとシンプルなスタイリングを選ぶ中、ビアンカ・センソリは一線を画していた。
センソリは夫のカニエ・ウェスト（現イェ）と授賞式に登場した。公の場でのきわどい服装からすると、センソリの長いフェザーコートはいつになく控えめに見えたが、それは単に長く着るつもりがなかったからだ。
写真撮影のために立ち止まってから数秒後、センソリはカメラに背を向けてコートを脱ぎ、想像の余地を残さない透明なメッシュでできた、まるで裸のノースリーブミニドレスを披露した。
ウェストの黒いＴシャツ姿は妻のまるで裸のようないでたちとあまりにも対照的だった/Daniel Dole/Reuters
ネイキッドドレスには、あらゆる形状、サイズ、露出の度合いがある。この種のドレスは暗示の力をテーマに据えており、着用者は一切露出していないこともある。９０年代後半、ジャンポール・ゴルチエは、ブレザーやドレスに裸体のイメージをプリントしたトロンプルイユ（だまし絵）柄で話題を呼んだ。このプリントはその後、グレン・マルテンスなどのデザイナーによって復活した。
初期のネイキッドドレスでさえ、実際に裸を見せることはなく、裸の肌の印象を与えるために巧みに配置された刺しゅうを活用していた。例えば、３６年の映画「浮気名優」のメイ・ウエストのドレスや、６４年の「大いなる野望」の宣伝でキャロル・ベイカーが着用したバルマンのドレスが挙げられる。ネイキッドドレスは、それに対する白熱した議論にもかかわらず、驚くほど控えめな場合があるのだ。
一方、グラミー賞のレッドカーペットでは、センソリの隣に黒のＴシャツとパンツにサングラスといういでたちでウェストが無表情で立っていた。ふたりはすぐに授賞式から連れ出されたという報道が飛び交ったが、一連の出来事に詳しい情報筋はＣＮＮに対し、それを否定。「彼は候補者だ。カーペットを歩いて車に乗り、立ち去った」と語った。
この登場の直後、夫妻はそれぞれのＳＮＳアカウントで、そのドレスをまとったセンソリのポラロイド写真を共有した。ウェストはインスタグラムの投稿（すでに削除されている）で、妻の衣装を「特注で仕立てたもの」と表現したが、賞賛に値する芸術性や巧みなドレープはなく、メイ・ウエストやベイカーのドレスのような刺激的な刺しゅうも施されていなかった。センソリの純然たる裸体は、疑問を投げかける。これはファッションなのか、それともただの体なのか。
ウェストは、自分がセンソリの衣装を個人的にデザインしたのか、あるいはデザインに関わったのかを明らかにしていないが、ＳＮＳユーザーらは、ウェストが妻の衣装選びに関与したのかについて論争している。センソリがカリフォルニア州の公然わいせつ法に違反したのではないかと推測する人もいる。
ロサンゼルス市警の広報担当者にこの件について尋ねたところ、担当者はメールで「グラミー賞での出来事は知らされていない」と回答した。
センソリはネイキッドドレスの流行史において確実に注目すべき瞬間を生み出したと同時に、いつもの思わせぶりなひそひそ声を、耳をつんざくような叫び声に変えた。
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原文タイトル：In a world of naked dresses, did one take it too far?（抄訳）
