(CNN) フランスで19日、ナポレオン・ボナパルトの有名な黒い帽子の一つが競売に掛けられ、米ドル換算で200万ドルを超える価格で落札された。
落札価格は193万2000ユーロ(約210万ドル=約3億1000万円)と、ナポレオンのトレードマークである軍正装用の二角帽子としては過去最高額となった。ナポレオンは二角帽子を120個ほど所有していたとされる。
競売を手掛けたフォンテーヌブローのオークション会社「オセナ」によると、いまも残るのは16個程度しかなく、その大半は歴史的重要性を考慮して博物館に所蔵されているという。
今回の二角帽子は、19日の競売に出された仏実業家ジャン・ルイ・ノワジエ氏のコレクションの一部。
ビーバーのフェルトを素材に作られており、赤白青3色のコケード(軍で使われる円花飾り)があしらわれている。
インターネット上のカタログによると、製作を手掛けたのはナポレオン宮殿の毛皮職人。落札価格は当初の推定額の倍以上となった。
ナポレオンは治世の中盤でこの帽子をかぶっていたと見られている。コケードの飾りを取り付けたのは1815年、エルバ島への島流しからフランスに帰還した後のことだった。
競売人のジャン・ピエール・オセナ氏はオークションに先立ち、「どこにいても人々はこの帽子を認識した」と説明。ロイター通信の取材に、当時は帽子の角を前後にして着用する人がほとんどだったが、ナポレオンは二つの角が両肩の位置に来るようにかぶっていたと解説した。
「戦場でこの帽子を見ると、ナポレオンがそこにいると一目で分かった。プライベートでは頭にかぶることもあれば、手に持つこともあり、時には地面に放り投げることもあった。言ってみればイメージ、皇帝の象徴だった」(オセナ氏)
2018年には仏リヨンで行われた競売で、別の二角帽子が40万ドル超で落札された。この競売を手掛けたオークション会社「ドベック」によると、ナポレオンは絶えず12個の帽子を用意していて、それぞれ帽子の寿命は3年だったという。
ナポレオンは1804年にフランス皇帝就任を宣言。当時の欧州大国の多くに戦争を仕掛け、軍の指導者や統治者として後世に影響を残した。
15年のワーテルローの戦いで英国に敗れ2度目の退位を余儀なくされると、南大西洋の孤島セントヘレナ島に流され、その地で死去した。
競売ではこのほか、カミソリや歯ブラシを完備したナポレオンの身だしなみ道具一式や、セントヘレナ島で病に陥った際に使っていたハンカチも出品された。
今回の競売と時を同じくして、今週にはホアキン・フェニックスが小柄な皇帝を演じるリドリー・スコット監督の大作映画も封切りされる予定だ。