練習は1日14時間・週7日 高額報酬を追う中国のeスポーツ選手

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「ファンプラスフェニックス」のメンバーが「リーグ・オブ・レジェンド」2019年世界大会でトロフィーを掲げる様子/Colin Young-Wolff/Riot Games Inc. via Getty Images

「ファンプラスフェニックス」のメンバーが「リーグ・オブ・レジェンド」2019年世界大会でトロフィーを掲げる様子/Colin Young-Wolff/Riot Games Inc. via Getty Images

北京(CNN Business) 中国の北京郊外にある巨大集合住宅の地下室。この場所では若い中国人の男性たちがスクリーンの前に集まり、コンピューターゲームを1日に14時間プレーしている。

もっとも、彼らは時間を持て余した友人同士でも、ただ熱心なだけのゲーマーでもない。新種のプロアスリートとして、大金を目指して練習に励んでいるところだ。

中国では現在、eスポーツが大きなビジネスとなっている。国営メディアによると、市場規模は1000億元(約1兆6000億円)以上に上るという。

それぞれのチームは若い専業プレーヤーを多数擁し、国際大会に向け各地で厳しい練習を積んでいる。

多くの点で他のスポーツ大会と変わらない光景だが、ひとつ異なるのは、ボールを蹴ったりバットを振ったりする代わりに、バーチャルな火の玉を投げつけ、ピクセルで表現されたテロリストを殺害する点だ。

写真撮影のポーズを取るRNG北京の「Dota2」チーム/STR/AFP via Getty Images
写真撮影のポーズを取るRNG北京の「Dota2」チーム/STR/AFP via Getty Images

2018年に行われたオンライン対戦ゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会では、中国のチーム「インビクタス・ゲーミング」が初優勝を飾った。欧米のライバルを破っての快挙で、賞金総額500万ドルの大部分を中国に持ち帰った。

eスポーツチーム「RNG北京」のマネジャーはCNN Businessの取材に、中国はプロゲームの分野で世界をリードする立場に上り詰めつつあるとの見方を示す。

eスポーツ革命

ビデオゲームのプロ大会は10年以上前から開催されてきた。

一般的には、各チームがデジタル世界で対戦するという大会形式で、求められるスキルはゲームごとに異なる。「カウンターストライク グローバル・オフェンシブ」では相手チームを可能な限り早く射殺しようとする一方、「リーグ・オブ・レジェンド」では敵基地を破壊するために力を蓄えることが目標となる。

こうした大会は当初、ゲーマー同士の腕試しの場として目立たない形で始まった。しかし、ゲーム動画のライブ視聴が流行する状況も追い風となり、eスポーツは急速に人気が拡大。もうかるビジネスとなりつつある。

市場調査会社ニューズーによると、eスポーツの世界売り上げは22年までに18億ドルに達する見通しだ。

韓国で行われた「リーグ・オブ・レジェンド」2018年世界大会の様子=2018年11月3日/ED JONES/AFP via Getty Images
韓国で行われた「リーグ・オブ・レジェンド」2018年世界大会の様子=2018年11月3日/ED JONES/AFP via Getty Images

1日14時間、週7日

RNGの北京本部となっている集合住宅では、「リーグ・オブ・レジェンド」の19年世界大会に備え、アスリートたちが懸命に練習に励んでいた。

練習会場の広い地下室には、高級ゲーム機が企業のワークステーションのようにずらり。それぞれのスペースには縫いぐるみや賞品、家族や恋人の写真といった私物が散らかっている。

運動や昼食の間、選手たちの様子は他の若者と変わらず、笑顔で冗談を言い合う姿が目立つ。しかしコンピューターの前に座ると、一瞬にして険しい真剣な表情に変わる。

毎日の厳しいスケジュールは、北京本部のマネジャーが作成する。練習は1日14時間、週7日だ。午後1時に起床すると1時間の個人練習を行い、午後5時までにチーム単位での対戦に加わる。

夕食後には運動のために散歩に出る。シャワー浴びてから午後7時に練習再開。さらに午後11時まで再び他チームと対戦し、午前4時まで個人練習を重ね、ようやく就寝するという。

「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会のグループリーグを前にしたRNGチームの様子=2019年10月、ドイツ/DPA/Picture Alliance via Getty Images
「リーグ・オブ・レジェンド」世界大会のグループリーグを前にしたRNGチームの様子=2019年10月、ドイツ/DPA/Picture Alliance via Getty Images

施設内では医師や理学療法士が選手たちの健康に目を光らせていて、少なくとも1日に1回、運動のため散歩に連れて行く。年後半の大会シーズンの前ともなると、こうしたスケジュールが3カ月間続く。

これは厳しいスケジュールであり、誰もが向いているわけではないという。

上海にあるチームの訓練学校では、やる気満々の10代の応募者から入学試験の申し込みが集まるが、合格者はほとんどいない。「我々の目標は勝利だ。楽しむことではない。みんなが勝ちたがっている。同僚からのプレッシャーもある」(マネジャー)

「インビクタス・ゲーミング」対「Fnatic」の試合を観戦するファン。2018年に行われた「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会の一コマ=2018年11月3日/ED JONES/AFP/AFP via Getty Images
「インビクタス・ゲーミング」対「Fnatic」の試合を観戦するファン。2018年に行われた「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会の一コマ=2018年11月3日/ED JONES/AFP/AFP via Getty Images

契約にこぎ着けた選手に対しては、高額な報酬が支払われる可能性もある。

マネジャーはチームの給料を明かさなかったものの、一部の選手の場合、賞金に加え、人民元ベースで6桁の年収を受け取るケースも珍しくないという。

eスポーツは他のプロスポーツよりも、選手が早い時期に始めて早期に引退するとされる。中国の選手の大部分は22歳未満であり、ストレスや要求の厳しさから多くが24歳までに引退するという。

「代わりはいくらでもいる」

eスポーツ元プロ選手、ヤン・ジュンゼさんは23歳にして既に引退した。

ヤンさんは2014年に10代でプロゲーマーのキャリアを歩み出すと、すぐさまRNGに採用された。短いキャリアだったが、その間にもプロゲームに対する世間の姿勢は大きく変わったという。

「当時、プロゲームは今ほど発達していなかった。周囲から懐疑的な視線を向けられ、eスポーツの選手は家族に内緒でプレーするのが常だった」

「今日では多くの若者がこの世界に挑戦したいと思っていて、両親のサポートも受けている」

ヤンさん現在、eスポーツの試合で解説を担当する傍ら、ファッションデザイナーを目指している。

以前の職業について聞かれると、ヤンさんは複雑な思い吐露。eスポーツの選手には今なお良い面が多く、「夢を追いかける機会を与えてくれる」と語る。

その一方で、選手時代の猛練習に起因するけがを今でも抱えていることも明かした。他の選手も頭や首にダメージを負ったという。

引退時に有名になっていないプロ選手の場合、試合解説のような実入りのいい仕事が回ってくる見込みはない。「そういう選手は忘れられる。有名になっておらず、何も実績がなければ、代わりはいくらでもいる」

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