「観光はよそへ行って」 アムステルダム、押し寄せる観光客に寛容も限界?

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街並みや運河が美しいアムステルダムで、「観光負荷」への対抗措置が打ち出されている/Shutterstock

街並みや運河が美しいアムステルダムで、「観光負荷」への対抗措置が打ち出されている/Shutterstock

(CNN) 美しい街並みや広々とした運河とともに、寛容性でも名高いオランダの首都アムステルダム。ところが年間数百万人もの観光客が押し寄せる現実を前に、そうした姿勢を大きく転換させている。

街が観光客であふれ返って行楽地と化し、地元住民の不満が高まる中で、寛容性も限界に達したらしい。アムステルダムは今、観光客に対し、よそへ行ってほしいと積極的に呼びかけるようになった。

街の設計にもかかわる建築事務所OMAのエレン・ファン・ローン氏は言う。「ベネチアのようにはなりたくない。我々が今直面しているのは、アムステルダムが観光客に愛され過ぎているという問題だ」

観光は年間820億ユーロ(約10兆円)の経済効果をオランダにもたらす。それでも観光客の激増によって、寛容な精神が失われることが心配だとファン・ローン氏は話す。

アムステルダムを訪れる観光客は、2018年の1800万人から、2030年には4200万人に増えると予想される。これは現在の人口の50倍以上に当たる。

オランダ観光局はこのほど、観光地としての宣伝をやめるという大胆な措置に出た。今年まとめた報告書では、このまま何も対策を講じなかった場合、アムステルダムは「観光過剰負荷」によって居住性に重大な支障が出ると予想している。

対策としては、迷惑な観光客を寄せ付けないために宿泊施設や娯楽施設を規制あるいは閉鎖する措置や、オランダの別の場所に観光客を分散させるなどの措置が盛り込まれた。

オランダを代表する花であるチューリップも多くの観光客を引き付けている/ROBIN UTRECHT / Contributor/ Getty
オランダを代表する花であるチューリップも多くの観光客を引き付けている/ROBIN UTRECHT / Contributor/ Getty

そうした対策の一部は既に実行に移されている。昨年には、市中心部のアムステルダム国立美術館前にあった「I amsterdam」の巨大文字が取り外された。「狭いスペースに大勢の人が集まり過ぎる」という市の要請に応えた措置だった。

チューリップの産地として知られるアムステルダム郊外のボレンストリークでは、写真を撮ろうとする観光客が押し寄せて花が踏み荒らされる被害が続出。観光局はマナーを守るよう呼びかけ、一部の農家は観光客が立ち入らないよう、畑の周りにフェンスを設置する措置に出ている。

市中心部の歓楽街では、旅行会社が実施している売春地区の見物ツアーが2020年1月以降は中止される。性産業従事者が観光の目玉として扱われているという懸念に応え、市がツアーの中止を指示した。

売春地区での見物ツアーは来年から禁止に/Getty Images/Sylvain Sonnet
売春地区での見物ツアーは来年から禁止に/Getty Images/Sylvain Sonnet

アムステルダムに大勢の観光客が集まるのは、自由さとリベラル性も1つの大きな要因だった。その一例が、オランダで2000年から合法化された売春だった。

しかし観光客を寄せ付けないための対策を講じることにより、そうしたアムステルダム独特の魅力が失われてしまうのではないかとファン・ローン氏は危惧している。

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