ロシアやイランの米選挙介入、生成AIで加速 まだ「革新」には至らず 米情報機関見解
(CNN) 11月の米大統領選挙に対するロシアやイランの介入について、米国家情報長官室(ODNI)は23日、人工知能(AI)は悪意ある介入を加速させているものの、まだ革新的な介入ツールにはなっていないとする見解を示した。
ODNIの見解は、AI関連の脅威を盛んに強調する一部メディアや業界の見方とは対照的だが、大統領選挙に対する脅威を監視する米情報機関にとって、AIが筆頭の懸念材料であることに変わりはない。
米当局によると、AIで生成された外国のコンテンツが米国の選挙に及ぼすリスクは、外国の工作員がAIツールに組み込まれた制限をかわす能力や、独自の高度なAIモデルを開発できる能力、あるいはAIで生成したコンテンツを「戦略的に照準を絞って拡散させる」能力にかかっている。「この3分野それぞれの背後に外国が関与している」と当局はみる。
外国の工作員は、AIを使って言葉の障壁を克服し、米国の有権者に偽情報を流そうとしているという。
ODNIによると、例えばイラン政府は、米国政治を分断する問題として移民政策に目を付け、AIを利用して移民に関するスペイン語のコンテンツを生成している。イラン政府とつながる工作員はまた、イスラエルのガザ衝突など世論を二分する問題について幅広い立場の有権者を標的とする目的でAIを利用しているとされ、イラン政府はトランプ前大統領を不利な立場に追い込もうとしていると米当局は分析する。
ODNIによれば、米国の選挙に関連したAIコンテンツの生成はロシアが最も多い。AIで加工された動画、写真、テキスト、音声などのコンテンツは、トランプ氏を後押ししてハリス副大統領をおとしめようとするロシア政府の取り組みと一致している。
一方、中国は「米国の政治的分断を増幅させる目的で」AIを使っているものの、米国の選挙を特定の結果に導こうとまではしていないと米情報機関は分析する。
外国の工作員はまた、選挙介入を狙って昔ながらの手段も駆使している。
9月初めには、ハリス氏が2011年に起こしたひき逃げ事故で幼い少女をまひさせたというデマ映像がXで拡散した。この映像はロシア工作員の演出だったとODNIはみる。米マイクロソフトの調査によると、ロシアは米サンフランシスコの地元メディアを装ったウェブサイト経由でこの話を拡散させていた。
「介入の分野に関してロシアの行動はかなり高度で、米国の選挙の仕組みについても、どこを狙うべきか、どの州を狙うべきかについても理解している」とODNIは分析している。