米教育省の廃止求めるトランプ氏、それが意味するものとは

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トランプ氏が掲げる「教育省の廃止」、その影響は

ワシントン(CNN) トランプ次期米大統領は、教育省の廃止を公約に掲げている。

大統領選での選挙活動中、トランプ氏は再三同省に言及し、連邦政府による過剰な干渉の象徴だと指摘。同省が米国人家族の日常生活に介入し過ぎているとの見解を示していた。

9月のウィスコンシン州の選挙集会では、教育省自体を最終的に消し去ると宣言。「我々は政府による教育の問題を取り除き、あなた方納税者の税金の乱用をやめさせる。それらの税金により米国の若者は、聞かせたくないあらゆる内容を吹き込まれている」と訴えた。

教育省は1979年、当時のカーター大統領が署名した法律によって作られた。それ以前、連邦政府の教育プログラムは他の複数の機関が担当していた。

トランプ氏はこれまでのところ、具体的にどのようにして教育省を廃止するのか、またその場合に連邦政府が資金拠出する教育プログラムがどうなるのかについて明言していない。

州と学校に資金を流す

教育省が担う最大の仕事の一部には、議会が割り当てた小中高校向け連邦助成金の管理や、学生ローン及び財政支援プログラムの運営が含まれる。

学校向けの資金拠出プログラムで特に大規模なのは、低所得世帯の子どもの教育支援や、障害のある子どもの必要を満たす目的で学校に資金を供給するプログラムとなっている。

こうしたプログラムは、教育省が掲げる「あらゆる個人へ向けた平等な教育機会へのアクセス確保」という目的の達成に寄与する。

連邦政府からのプログラムで供給される資金は年間約280億ドル(約4兆3000億円)だが、これは学校向けの資金全体のおよそ10%でしかない。残りは州や地方の税金によって賄われている。

ただ過去4年間では追加の連邦資金も各学校に支給され、新型コロナのパンデミック(世界的大流行)からの回復支援に充てられた。

監督の実施と規制の策定

教育省は監督業務と連邦規則の策定にも取り組んでいる。

たとえば傘下の公民権局は、小中高校並びに大学で差別の申し立てがあった場合これを調査する義務を負う。昨年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲以降、そのような申し立ては著しく増加している。

バイデン政権下の教育省は、トランスジェンダーの生徒の保護を強化した。同政権による学生ローン免除の規程の作成にも教育省は関わったが、これらの施策を巡っては現在裁判が行われている。

これとは別に、第1次トランプ政権は、マイノリティーの生徒が学校で不公平な罰則を受けないよう定めたオバマ政権時代の指針を撤廃した。

一方で州や各地の学校が持つ権限が教育省に取って代わられることはなく、たとえばパンデミックの期間、同省が各学校に対し閉鎖や対面授業の継続を義務づけることは不可能だった。

教育省終了でも政府の教育資金は維持か

低所得世帯の子どもや障害のある子どもを支援する前出のプログラムは、仮に教育省が廃止されても他の省庁に移行される可能性がある。

教育財政政策に特化したジョージタウン大学の研究センター、エデュノミクス・ラボのマーガレット・ローザ所長も、各学校が突然資金を失う事態にはならないとの見方を示している。

ローザ氏によると、低所得世帯の子どもに向けた財政支援プログラムは、党派にかかわらず議員らの間で相当に人気が高いという。

過去に大統領が教育省の予算削減を提案した際には、議会がこれを拒否してきた。ブルッキングス研究所の分析によれば、議会が大統領の要望を上回る予算を割り当てたケースは、全体の約71%を占めるという。

第1次トランプ政権による教育省の予算削減提案に対してさえも、共和党が多数派だった当時の議会は最終的に予算を拡大している。

議会が省の完全廃止を認める公算は小さい

注目すべきは、省庁の廃止に当たって議会の行動が必要になるという点だ。

教育省の廃止や他の省庁への再編を求める声が上がるのは、今に始まった話ではない。共和党のレーガン大統領(当時)が同省の廃止を呼び掛けたのは、省としての稼働開始からわずか1年後の1980年だった。しかし議会での支持はほとんど得られなかったようで、廃止要求は撤回された。

第1次トランプ政権では教育省と労働省の合併が提案されたが、議会の上下両院を共和党が抑えていた当時でさえ、この案が実現することはなかった。

来年1月の連邦議会で上院は共和党が多数派を握る見通し。下院の勢力分布はまだ確定していない。今回新たに選出された共和党の上院議員、バーニー・モレノ氏(オハイオ州)とティム・シーヒー氏(モンタナ州)は、共に教育省の廃止案を支持している。

しかし、仮に共和党が下院を抑えたとしても、今回連邦議会で教育省の廃止が十分な支持を得られるかどうかは依然として不透明だ。

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