東南アジアに「浸食」するISIS、中東から軸足移すか
(CNN) 街中にある学校の屋根の上に、過激派組織「イラク・ シリア・イスラム国(ISIS)」の黒い旗が掲げられている。ここはISISの従来の勢力範囲であるシリアやイラクではない。中東から遠く離れた東南アジアのフィリピンだ。
比南部にISIS指導者
同国南部ミンダナオ島のマラウィ市では5月、ISISとつながりのある戦闘員と政府軍が交戦。島全域に戒厳令が布告される中、戦闘開始から1週間以内に少なくとも103人が死亡した。
地元住民によれば、イスラム教徒が大半を占めるマラウィに戦闘員が突然入ってきたのは5月24日の午後。覆面を付け、突撃銃を携行していた。黒地に白い文字で「アラーの他に神はなし」と書かれたISISの旗が「市内のあらゆる所で」はためいていたという。
フィリピン軍の報道官は、政府軍と戦闘員の衝突で5月28日午後までに民間人19人、軍要員11人、警官4人が死亡したと言及。戦闘員61人も殺害されたと確認した。
これとは別に、同市を脱出中だったとみられている8人も峡谷で遺体で発見された。CNNフィリピンが目撃者の証言として伝えたところによると、犠牲者はイスラム教の祈りの文句を暗唱するよう要求された。暗唱できなかった人は武装集団に拉致されたという。
今回の衝突が激化したのは5月23日。ISISの東南アジア指導者に昨年指名されたハピロン容疑者を標的に、フィリピン軍が作戦を実施したのを受けてのことだ。
包囲され拘束を恐れたハピロン容疑者は、ISISに忠誠を誓う地元のイスラム主義軍事組織「マウテグループ」構成員からの援軍を緊急に要請したとみられている。同組織のメンバーは数百人規模でマラウィに流入。建物に放火したり人質を取ったりしたほか、政府軍との市街戦に突入した。