モスル(CNN) イラク軍が過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」からの奪還をめざす北部モスルでは、燃え盛る戦火の中、取り残された市民が死の恐怖に直面している。その最前線をCNNが取材した。
モスル西部の前線からわずか数キロの場所に設けられた野外診療所の奥で、10歳のマリアム・サリンさんと姉のイナアムさんが手当てを受けていた。自宅から一家で逃げ出そうとしたちょうどその時、迫撃砲が撃ち込まれて家が崩壊した。ほかの家族は全員、がれきの下敷きになった。
「みんないなくなってしまった。母さんも父さんもきょうだいも」と、マリアムさんは取材班に話す。だがそれを実感として受け止めることは、まだできていないようだ。
マリアムさんはイナアムさんに寄り添い、顔の消毒液をふき取ってあげたかと思うと、急に体を震わせて涙ぐむ。
自宅周辺は今もISISの支配下にある。イラク軍はすぐ近くまで迫っているのだが、がれきの下から家族を救出することができない。両親や弟が生きているようにと、ただ望みをつなぐばかりだ。
取材班はさらに前線へ近付いた。煙が立ち上り、遠くで爆発音が響く。
イラク軍の司令官は動揺した表情で、がれきの下から収容した遺体の話をした。乳児を抱いたまま息絶えた母親の遺体だったという。
生き残った市民が次々とイラク軍部隊の下へ逃れてくる。
市民たちの言葉には深い悲しみや怒り、安どの感情が込められていた。「この3年間、いったいどこにいたの」と、兵士たちを責める女性。「20日前に脱出しようとしたんだ。あいつはISISに捕まって、頭を4回も撃たれてしまった。私の弟だ」と声を詰まらせる男性もいた。
11人家族の母親は「小麦粉と水でしのいでいた」と訴える。それも子どもたちの飢えを何とかいやすほどの量しかなく、夫と自分は4日間何も食べずに通したという。