タイ国王、姉の王女の首相候補の受諾批判 総選挙控え
バンコク(CNN) 軍政から民政へ移管する総選挙が今年3月24日予定されるタイのワチラロンコン国王は8日夜、姉のウボンラット王女(67)がタクシン元首相派の国家維持党の首相候補になったことを強く批判する声明を出した。
王室の高位にある者が直接的もしくは間接的に政治に関与するのは王室の伝統などに背くとし、「極めて不適切」と叱責した。一方、軍政率いるプラユット暫定首相は同日、親軍政政党の首相候補になると発表した。
総選挙は、国内の支持を一定に保つタクシン派を排除し軍主導の政権継続を目指す軍政政党と、政権奪還を狙うタクシン派政党との対立の構図が色濃い。王女を擁立する異例の動きで総選挙の行方は不透明となった。国民国家の力党など親軍政勢力には不利な材料になりかねない。
タイの王室は国民の尊敬を集め、批判を控える対象ともされる。王室はこれまで政治的には中立姿勢を維持しており、王女の出馬はその立場の変質との見方もある。
国家維持党の幹部は声明で、王女は知識が豊富で有能とし、「我々の求めを受け入れた」と述べた。王女は国民に和解をもたらすため首相としての務めを担う時機と判断しているとも語った。
タクシン元首相は2005年の軍事クーデターで、元首相の妹であるインラック前首相の政権も2014年の軍蜂起で崩壊した。その後は軍政が続くがタクシン派政党は依然、国内北東部などに根強い支持基盤を持つ。
ウボンラット王女は16年に死去した故プミポン前国王の長女。米国人と結婚して王室からいったん離れた。離婚してタイに戻った後は王室の活動に関与し続けている。