ウクライナ・ザポリージャ原発、内部の様子は 核惨事の懸念も
「発電所で何か事故でも起きたら……どうなるのか想像もできない。助かる道があるとでも? 向こう岸の原子力発電所からは7キロしか離れていない。私たちを助けてくれるものはきっと何もないだろう」。ミラエフスカさんはCNNとの電話インタビューでこう語った。
「だからそういうことは考えないようにしている」(ミラエフスカさん)
先月の砲撃で大勢の住民が慌てて避難したが、ミラエフスカさんは地元を支援するために残ったと述べた。見捨てられたペットを引き取るのが主な活動で、夜になると10代の息子とともに動物たちを地下室兼防空壕(ごう)へ連れていく。2人ともそこで寝泊まりしている。
「砲撃が始まると普通の生活は一変した。今は地下室で暮らし、夜になると下りていく。もう何カ月もそこで寝泊まりしている」とミラエフスカさんは言い、「敵を侮るべきではない」とも付け加えた。
世界各国の専門家も同じようなメッセージを発信し、たった1発の流れ弾が大惨事を引き起こしかねないと警告している。
エネルゴアトム社によれば、先週末には使用済み核燃料の入ったタンクを保存する乾式保管施設と放射線検出測定器が砲撃で損傷した。これにより、放射線漏れを事前に検知することは不可能になったという。また高圧送電線も損傷し、原子炉1基の運転を中止せざるを得なくなった。
砲撃が激化しているのを受け、IAEAは施設の状況分析や安全確保のために視察団を派遣しようという努力をいっそう強めている。
専門家による初期の評価では「核の安全性に直接的な脅威はない」と判定されたものの、グロッシ事務局長は11日、「いつ何時変化するかわからない」と述べた。IAEAはウクライナおよびロシア当局と頻繁に連絡を取っているが、双方から提供される情報が「矛盾している」とも付け加えた。
先週には敵対行為の停止を求める声が高まった。主要先進国(G7)は10日、ドイツでの会合後に声明を発表し、軍隊を撤退して発電所の管理をウクライナ側に引き渡すようロシアに要請した。
G7は声明の中でロシア軍に責任があるとし、「原子力事故などのリスクが深刻なほど高まっており、ウクライナ国民や周辺諸国、国際社会を危険にさらしている」と述べた。
米国務省の広報担当者は11日、原子力発電所周辺に「非武装地帯」を設けるという呼びかけを米国も支持していると述べ、ロシアに対しては「ウクライナの原子力施設やその周辺で軍事活動を完全停止するよう」要請したと伝えた。