イラク首都のグリーンゾーンで衝突、10人死亡 有力指導者の政界引退表明受け
(CNN) イラク首都バグダッドのグリーンゾーン(旧米軍管理区域)で29日、イスラム教シーア派の指導者サドル師の政界引退表明を受けた激しい衝突が発生し、少なくとも10人が死亡、200人以上が負傷した。複数の情報筋がCNNに明らかにした。
目撃者数人がCNNに語ったところによれば、治安部隊が催涙ガスや実弾を発射して抗議デモ参加者を共和国宮殿から追い出したという。サドル師の表明後、数百人の抗議デモ参加者が同宮殿に突入したとイラクの治安担当当局者は述べた。
同治安部隊は30日、ロケット弾4発が堅固に防備されたグリーンゾーンに撃ち込まれ、居住棟に被害が出たと語った。ロケット弾は市東部の複数の地域から発射されたとしている。
イラク首相府の声明によると、カディミ首相は新たな通知があるまで全ての閣議を停止。サドル師に対して、デモ参加者へ向けた呼びかけに協力し、政府機関から立ち退かせるよう強く求めた。
サドル師は2カ月前の時点で政治に関わらない考えを発表。自身の会派の全議員に対し辞職を命じる決定を下したとしていた。今回は政治からの「最終的な引退」を表明し、全国にある自らの政治機関も閉鎖するとした。サドル師の機関が29日に公開した声明で明らかにした。
イラクは昨年10月の議会選挙以降、新政権の樹立に苦慮している。選挙ではイランに支えられたシーア派の議員連合が、サドル師の会派に議席を奪われていた。
かねてイランと米国の双方に対立する立場を示していたサドル師は、イラク国内で高い人気を誇る。しかし政権樹立に向けた同氏の取り組みは敵対する議員連合の反対に遭い、選挙から数カ月の間に頓挫(とんざ)していた。