兵器で劣るウクライナ軍パイロット、ソ連時代の旧式ヘリで対抗 「無いよりまし」
取材に応じたセルヒー氏とヘナディー氏は2人とも、20年以上の飛行経験を持つ中年パイロットだ。2000年代初頭、リベリアやシエラレオネ、南スーダン、コンゴ民主共和国(DRC)で国連平和維持活動に従事し、多くの時間を飛行に費やした。
この時の経験は貴重だったと、2人は振り返る。これによって飛行時間を維持するとともに、内戦が続くDRCのような難しい状況下で低空飛行する経験が得られた。
それでも先ごろ、セルヒー氏はCNNの取材に、樹木に接触した経験を打ち明けた。5枚あるヘリの回転翼のうち3枚が損傷し、約6メートル下への不時着を余儀なくされた。セルヒー氏が操る往年の名機Mi8はいずれもソ連崩壊前に製造されたもので、機齢は30年を超える。機体の側面には排気やオイルの黒い筋が付着している。
危険な前線付近にいたセルヒー氏は、地上にとどまる訳にはいかなかった。そこで、手短に機体を確認した後、回転翼が損傷した状態のまま離陸。後方拠点まで飛び、技術者に別のヘリから取り外した羽3枚と交換してもらった。
ウクライナ軍は少ない装備品をやりくりしている状況だ。味方から供与された装備品よりも、ロシア軍から鹵獲(ろかく)した装備品の方が多い。
ウクライナのゼレンスキー大統領は北大西洋条約機構(NATO)などに対し、航空機の供与を要請してきたものの、反応は今のところ乏しい。
英国はウクライナのヘリ部隊を増強するため、軍を退役した古い「シーキング」を少数供与すると表明。ポルトガルはロシア製の「Ka―32A11VS」6機を供与したが、この6機は安全に飛べる状態にすらなく、同国国防相によると、ウクライナが自ら修理する必要があるという。
「他に何ができるというのか?」
ウクライナのパイロット、セルヒー氏にとって、こうした装備品は早く到着するに越したことはない。旅団の作戦基地でCNNの取材に応じた同氏は「我々の保有機はソ連時代のものなので、もちろん新型ヘリが必要になる。現在は保有機から限界を超えた能力を引き出している状態だ」と語った。
「アパッチなど、何らかの新型へリが手に入ればうれしい。我々には意欲がある。ごく短時間で運用方法を習得できるだろう」(セルヒー氏)
ヘナディー氏は「手元にあるのは確かに古い航空機だが、何も無いよりましだ。我々に他に何ができるというのか?」と問いかける。