兵器で劣るウクライナ軍パイロット、ソ連時代の旧式ヘリで対抗 「無いよりまし」
(CNN) ヘリコプターが機首を持ち上げると、水平線が一瞬消える。かすかな衝撃音がして、ロケット弾が茶色の煙をたなびかせながら弧を描いて飛んでいく。ヘリは外部から側面に力を加えられたように機体を傾かせる。
地上に降下したヘリは、熱探知ミサイルをそらすため尾部からフレアを放出した。
ロケット弾が目標に着弾すると、地上そのものが火を噴く。ウクライナ東部バフムートを巡る戦闘のどこかで、ばらばらになったロシア兵が燃えているはずだ。ゆっくり考えている時間はない。ロケット弾の成果は後でパイロットに伝えられる。今の任務は生き延びることだ。
ウクライナ側の損害は国家機密に属する。ただ、「シコルスキー旅団」のパイロットや搭乗員は全員、ロシアの地対空ミサイル(SAM)で友人を亡くした経験を持つ。肩撃ちされることが多いこうした携帯式ミサイルは、数秒でヘリを炎上させることができる。
彼らは狙われている。それは空中にいようと地上にいようと関係ない。ウクライナ空軍や陸軍の飛行士はロシアのミサイルの優先目標であり、ロシア大統領府のリストで最上位に入るとみられる。
CNNは今回、ウクライナ東部で秘密基地を拠点に活動するシコルスキー旅団に同行取材した。基地には少数のヘリやパイロットがいて、ロシア軍に対する戦闘任務を実施している。
航空機やパイロットの面でのロシアの圧倒的優位を考えると、ウクライナが今でもロシア軍に脅威を与えていることは驚きだ。
バフムート近郊での戦闘任務から戻るウクライナ軍のヘリ/Sarah Dean/CNN
ロケット弾を搭載したロケットポッド/Sarah Dean/CNN
シコルスキー旅団の副指揮官は「自分たちがこの場所にいることにいつも驚かされる。それでも、我々は現にここにいる。決して立ち止まらない」と語った。副指揮官の名前と居場所は軍事機密に当たる。
ウクライナのヘリ操縦士は超低空飛行せざるを得ないため、機内にいると、水面をかすめて跳ねる小石に乗っているような乗り心地がする。