兵器で劣るウクライナ軍パイロット、ソ連時代の旧式ヘリで対抗 「無いよりまし」
消耗戦となっている戦争で、ウクライナのパイロットたちは多くの友人を失った。彼らの主な武器はほぼ間違いなく、ロシア軍に比べ高い士気だ。ウクライナ兵たちは、あたかも自分たちの命がそれに懸かっているかのように、西側の航空機を切望している。実際、その通りだろう。
ユーリ氏は経験豊富な副操縦士と組む比較的若手のパイロットだが、今年だけで計100回を超える戦闘任務をこなした。「旧式ヘリを操る技量の高いパイロット。それが我々の持てるものすべてだ」とユーリ氏。「新しい機材があれば、もっとうまく任務を遂行できる。戦闘中の歩兵支援も向上するし、当然、死傷者も少なくて済む。西側モデルの方がヘリを守るシステムがはるかに優れているからだ」と語った。
今回の飛行で使われたMi8は1960年代に輸送機として開発されたものだが、現在はロケット弾を搭載する。現代のヘリやソ連時代の攻撃ヘリとは異なり、パイロットを守る装甲は存在しない。
ウクライナのヘリ操縦士、ヘナディー氏はロシアで教育を受け、ロシア軍の将校として3年間従軍した/Sarah Dean/CNN
高度な目標選定システムも搭載されていない。ロケット弾を効果的に使えているのは、希望と経験のなせる技だ。
先日、バフムート近郊への攻撃に集まったロシア軍に対して出撃した後、セルヒー氏は「目標を攻撃できた。満足している」と語った。
だが、セルヒー氏がそれは知ったのは24時間後、ウクライナの無人機オペレーターから電話で連絡を受けた時のことだった。セルヒー氏自身はロケット弾が地上に着弾する前に、急いで木の高さより下の高度に逃れたためだ。
「ロシア軍は30キロ以上離れた位置から我々を見つけ、攻撃できる」「我々にはロシア軍を追跡するレーダーがあるので、彼らの攻撃を察知して着陸したり、丘の裏に隠れたりすることも場合によっては可能だ」(セルヒー氏)
ヘリにはロシアの現代的なSAMをそらすための「電子対抗手段」や、空対空ミサイルが搭載されているが、そうしたシステムにしても旧式なことに変わりはない。
「これが機能するかは分からない」とヘナディー氏は語り、「だが2%でも機能すれば、何も無いよりましだ」と言い添えた。
「無いよりまし」。ロシアの侵略者から欧州を守る役割を自任するパイロットらは当面、この姿勢で乗り切るしかないだろう。
死別の痛みはまだ癒えない。「12月、とても仲の良かった友人を亡くした」とセルヒー氏は明かし、「不幸なことに、多くの知り合いや友人は既に死亡した。とてもつらく、動揺している。立ち直れなそうもない」とつぶやいた。