「脳死」状態から革新者へ、ウクライナの戦争で変化したNATO

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北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=4月20日、ウクライナ首都キーウ/Ukrainian Presidential Press Service/Reuters

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=4月20日、ウクライナ首都キーウ/Ukrainian Presidential Press Service/Reuters

こうした惰性もあって、西側諸国はロシアや中国をはじめとする敵国のサイバー攻撃や非通常型の脅威への対処が遅れた。この分野の専門家は、ロシアが他国の選挙への介入に成功したり、中国が新型コロナウイルスの流行時に西側諸国で偽情報を拡散するのに成功したりしても全く驚きはしなかった。

NATOの元公式の歴史家ピーター・キャディックアダムス氏は、現在戦火にない国が戦時中のようにふるまうのは極めて困難だと語る。実際に兵士を戦場に送り込んではいないが、攻撃的で見えにくいところに潜んでいる脅威に対応する場合、こうした戦争時の意識が重要だ。

「加盟国がすんなり拠出してくれれば、NATOもその分速やかに進められるのだが。平時の民主主義国が思考を切り替えて、敵国の非正規攻撃に反撃するのは非常に難しい。戦時中でなければ、国や国民が見えない部分に喜んで金を出すには限界があるだろう」と、キャディックアダムス氏はCNNに語った。

来月のNATO首脳会議で、スウェーデンが32番目の加盟国になるかどうかが注目される中、NATOもこの機会に、将来への備えを進めていることをアピールする予定だ。

公表が予定されているのは、23の加盟国とIT企業による共同プロジェクト「NATOイノベーション基金」だ。賛同する加盟国は有限責任パートナーとされ、企業の筆頭株主になることはない。そのため企業側は、非NATO加盟国も含む外部投資家との提携が可能になる。

近い将来、国家や国際社会の安全保障に必要不可欠となる技術の開発に、NATOほどの組織がなぜこれほど規制の緩いやり方をするのだろうか。

「GPSにせよインターネットにせよ、かつてイノベーションは防衛分野から発信されていた。だが今では、そうした世界も完全に様変わりした。もはやイノベーションは大企業や政府発信ではなく、スタートアップ企業や学術界から生まれている」(ファンウィール氏)

先のイノベーション基金は、差し迫る非正規攻撃への対策としてNATOが年内に発動する2番目の施策だ。今月19日には、「防衛イノベーションアクセラレータ(DIANA)」の1次試験運用がスタートしている。

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