「脳死」状態から革新者へ、ウクライナの戦争で変化したNATO

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フランスのマクロン大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=2月、フランス首都パリのエリゼ宮/Emmanuel Dunand/AFP/Getty Images

フランスのマクロン大統領(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=2月、フランス首都パリのエリゼ宮/Emmanuel Dunand/AFP/Getty Images

今後10年の様相がどうなるにせよ、西側の備えを整えておこうという今回の措置は、果たして成功するだろうか。いずれにしても中国は敵意をさらにあらわにしているし、ウクライナ戦争がどのような形で終結するのか、国境を越えて飛び火するのかもまるで見えない。仮に終結したとしても、NATO加盟国がふたたび現状に甘んじる危険もあるかもしれない。

過去数十年、加盟国は「防衛および安全保障の問題について消え去ったふりをする余裕があった」が、現在NATOはその代償を払っているのだとジャイルス氏は主張する。ロシアのウクライナ侵攻で、「正規・非正規を問わず安全保障に関して、欧州は脅威にさらされていること、防衛に予算を投じる必要があることに疑問の余地がないことは証明されたはずだ」と同氏は言う。

今のところは政治家も防衛費の増額と防衛強化を約束しているが、ウクライナの戦争をもってしても、重要性を国民に納得させるには「発想の転換が必要だ。ほとんどの西側の政治家の手には負えないようだ」(ジャイルス氏)

キャディックアダムス氏は、NATOがウクライナをきっかけに、実際に参戦しなくとも同盟が効果的に機能することを証明できたと指摘した。おかげで加盟国も、今後は以前より快く防衛費を拠出できるだろう。

「基本的に、ウクライナによってNATOの非正規攻撃対策の実験に弾みがついた。ロシアと一戦交えずとも、NATOがやりたくても政治的にできなかったことがウクライナを通じて実践できた。戦争の挑発やドイツの消極性についても、軍事面でいえば戦闘能力という点でも、多くの疑問に答えを出している」(キャディックアダムス氏)

過去のマクロン大統領の「脳死」発言が出てきた背景は忘れられがちだ。プーチン氏の行き過ぎた行動にNATOが不意を突かれたことからも、マクロン大統領の見方にはいくらか信憑性(しんぴょうせい)があると言えるだろう。

だがウクライナの戦争に対する西側の反応で最も予想外かつ歓迎されたことのひとつに、NATOの結束がある。加盟国の国内政情が比較的安定しているため、NATOは新しいことに挑戦し、それに予算を投じることができる。

とはいえ、当局者らはこうした合議制のアプローチが永遠に続かない可能性も認識している。一部の当局者が最も恐れているのは、戦争の長期化で国際社会の関心が失われかもしれないという不確定要素ではない。NATOの加盟国全てでウクライナ情勢が争点となる選挙が行われる可能性があり、小さいかもしれないが米国の24年大統領選挙でも争点となっている。

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