練兵場と化す校庭、軍国主義化が進むロシアの学校
兵役に備える次世代
ロシアの子どもたちは、具体的な形で戦争に貢献することが求められている。ロシアの与党「統一ロシア」がウラジオストクで始めたプログラムでは、児童が(党指定の型紙で)兵士のズボンや帽子を縫っている。
ウラジーミルでは「戦う男たちのために縫い物を」とのキャンペーンの一環で、子どもたちが職業訓練として軍仕様の目出し帽を縫っている。
ボロネジの技術専門学校の生徒たちは、ロシア軍の簡易ストーブや塹壕用のろうそくを作る任務を任された。ウスリースクでは障がいを抱える女の子たちが、北部軍管区のために「敵か味方か」という文字を縫い付けたはちまきや帯布を作った。極東ブリヤート共和国では、孤児院の子どもたちがウクライナで戦う兵士のために「幸運を」と書かれたお守りを縫った。
兵士に手紙を書く活動も行われている。チタの地元メディアは、「5歳の幼稚園児の男の子たちが自信を持って応じた」という話を大々的に報じた。「子どもたちは兵士のイラストにていねいに色を塗った後、三角形の封筒に封をした」
地元メディアはこうした活動をすべて、ウクライナ戦争を支持する愛国精神の高揚という大規模な活動の一環として報じている。
「青年ミリタリースポーツ大会」と題した競技会への出場を呼びかける動きもある。
オレンブルクではちょうど地区大会決勝が閉幕したばかりだ。不法に併合されたウクライナの地域を含む14チーム180人の選手が、手りゅう弾投げ、基礎演習、障害物を抜けてカラシニコフ銃を組み立てるレース、兵器の格納、軍の歴史クイズなど様々な競技に参加した。
国防省によれば、「互助と同胞意識を育成し、士気や精神的資質を高め、若い世代にロシア連邦陸軍での兵役の準備をさせること」が目的だという。
軍関係者が学校を訪問するケースもある。ブリヤート共和国では子どもたちが、負傷兵の学校訪問について語っていた。その負傷兵はウクライナでポーランド人の傭兵(ようへい)を相手に戦ったと言い、ウクライナ人も「本当は戦いなど望んでいないが、強制的に戦わされている」と語った。
少なくとも、こうした教育改革に消極的な教師が数人解雇された例はある。ただし、具体的な人数は知る由もない。ペルミでは戦争賛成派から批判された校長が辞職した。その校長は特別軍事作戦を授業で教えることに乗り気ではなかった。
同じく、軍事色の濃いカリキュラムの導入に対する保護者の心情も見当がつかない。一部では反対の声も上がっているが、世論調査のデータを信じるのであれば、大多数が軍国愛国主義化の動きを支持しているようだ。
ロシア国営RIAノーボスチ通信の報道によれば、保護者の79%が子どもに戦争の動画を見せることに賛成しているというアンケート結果も出ている。
ソーシャルメディアのコメントからも、多くの国民がロシアは敵の超大国から包囲され、爪はじきされていると感じているようだ。唯一残された選択肢は、自分の身は自分で守ること。大統領や国営メディアが力説するこうしたメッセージは、いまや学校に浸透しつつある。